「妻はソウルメイトで、彼女は恋人」 42歳夫が10歳年下女性の肌に見た“運命の証”とは

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今思えば、あのころは幸せだった…

 その後、治樹さんは部署を異動になったが同じ会社で仕事を続けた。子どもはほしいのかほしくないのか彼にはわからなかった。彼女は彼の育った境遇を知り、弟にも会って話を聞いてくれた。

「弟さんの勇気はすごいけど、あなたにはあなたの気持ちがある。子どもは自然に任せようと言ってくれた。何のプレッシャーもかけず、僕が僕のままでいいんだと思わせてくれたのが梢さんなんです。僕は彼女を呼び捨てにはできなかった。ずっと梢さんと呼んでいました」

 幸せという感覚はわからないが、今思えば、あのころは幸せだったんだと思うと彼は言った。肩の力が抜け、仕事に対してまっすぐ取り組むことができるようになった。彼女と結婚したことで友だちができた。

「それでもやはり僕にはひとりになる時間が必要でした。ずっとひとりで生きてきたからなのか、ひとりでいる時間があるからこそ梢さんと一緒にいる時間が愛おしくなる。彼女はそんな僕の気持ちを理解してくれた」

にもかかかわらず… 「騙すつもりは」

 ところがひとりの時間を大事に過ごしていた彼に、思いがけない出会いが待っていた。初めて入ったバーで知り合った若い女性と二言三言交わしたとき、彼の体に電流が走ったような状態になった。

「誤解を恐れずに言えば、僕はこの人を知っているという感じ。は、スピリチュアル的なことはまったく信じていないんですが、それでもこの出会いは奇跡だと思った。彼女とはそれからも店で会って話す状態が続きました。だんだん彼女の人となりもわかってきたけど、僕との接点はまったくない。それでも僕は彼女を知っているという思いが脱けることはありませんでした」

 千奈美さんといい、彼より10歳年下の29歳だった。出身地も育った環境も何もかも違うけれど、心の中では「近い人」だった。恋い焦がれたわけではない。それなのにある日、彼女の夢を見た。

「抱き合っている夢でした。彼女の右胸に親指の爪ほどの痣があった。それが妙に色っぽくて指で撫でているという官能的な夢だった」

 自分と彼女の行く末を暗示しているようだった。彼女に会うのが怖くなった。それでも会わずにはいられなかった。

「何度も会っているうち、お互いに我慢できなくなって体を重ねてしまいました。不思議と罪悪感はなかった。梢さんは僕のソウルメイトみたいなもの。千奈美は恋人。そんな意識だったんです。だから千奈美から『治樹さんは結婚しないの?』と聞かれたとき、『あんまりしたいと思わないんだよね』と言ってしまった。自分が結婚していることを隠そうとか嘘をつこうと策略を巡らせたわけじゃない。結婚しているという意識が希薄だったのと、いつも自分はひとりだと思い込んでいたからかもしれない」

 騙すつもりはなかった。そもそも千奈美さんも、彼が独身だと思い込んでいた。だから結婚しないのという質問が出たのだろう。

「そしてもうひとつ、びっくりしたのが彼女の右胸に、夢で見たのと同じ痣があったことです。やっぱり僕たちはつながっていたんだと思った。その話を千奈美にしたけど信じない。だから僕は財布を開けて紙を取り出しました。あの夢を見たあとにメモ用紙に日付と時間と痣の絵を描いておいたんです。こんな日が来るかもしれないと思ってと言って見せたら、彼女、青ざめていました。そして『実は私も、最初に会ったときから、どこか深いところでつながっている気がしたの』と」

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