結婚を秘密にしたまま独身女性と交際…「騙すつもりは」 42歳“偽装男”が育った家族崩壊の半生
【前後編の前編/後編を読む】「妻は恋人、彼女はソウルメイト」 42歳夫が10歳年下女性の肌に見た“運命の証”とは
独身偽装がときどき話題になっている。男性がバツイチと偽ったり、別居期間が長く離婚協議中だとか嘘をついたまま女性と交際し、のちに問題となるケースも少なくない。昨年、女性タレントがイケメン社長と半同棲中のところを週刊誌に直撃され、彼が既婚だと聞いてショックを受けていたニュースもあった。
【後編を読む】「妻はソウルメイトで、彼女は恋人」 42歳夫が10歳年下女性の肌に見た“運命の証”とは
「嘘をつくつもりはなかったんです。でも相手が僕のことを独身だと思い込んでいて……。既婚だというタイミングがつかめなかった……」
苦しい言い訳をしてみせるのは、小野田治樹さん(42歳・仮名=以下同)だ。若く見える上に、人の良さそうな笑顔が女性を安心させるタイプだ。なんとはなしに「人畜無害」を感じさせるのだが、実際、彼の心の中までは誰にもわからない。もちろん、彼に悪意があったわけではないのだが、結果として身分を偽装したようなことになり、つきあっていた独身女性を傷つけた。もちろん、妻も傷ついたはずだ。
DV父に耐えかねて
治樹さんは首都圏の某市で生まれ育った。今どき珍しい4人きょうだいの長男だが、家族は空中分解してしまっている。
「父は口より手が早いタイプだったんです。自分が地方の貧乏な家の出身で中卒だったことにコンプレックスをもっていた。職人としてきちんと仕事をしていたのに、自分に自信がもてなかったんでしょうね。母は短大を出た会社員だったけど、なぜか父と一緒になって、しょっちゅう殴られて泣いていました。どうして父と結婚したのかはわかりません」
25歳のときに結婚したふたりの間には、治樹さんからみて2歳違い、4歳の違いの弟と5歳違いの妹がいた。決して裕福ではなかったが、きょうだいは仲がよかった。だが、すぐ下の弟が小学校5年生から学校に行かなくなった。治樹さんは弟の話を聞こうとしたが、弟は心を閉ざした。
「僕が高校2年生のとき、弟は突然自殺しました。近所の林の中で首を吊っていた。僕は父のせいだと思いました。その数日前も父は弟を殴っていましたから。家庭にも学校にも居場所がないと思いつめたんでしょう。僕は父に『あんたが殺したんだ』と言いました。父は僕を殴ろうとしたけど、僕はそれを簡単に交わして逆に父をぶん殴った。たたらを踏んで転がった父に馬乗りになってボコ殴りしました。母が止めなかったら父を殺していたかもしれない」
[1/2ページ]