「葉酸摂取で医療費が全国最低水準に」 92歳の現役栄養学者が教える超健康法 「信仰心、ヨガや気功なども長寿に関係」
医療費が全国最低水準に
バランスの良い食事を心がける中で、特に私が強調したいのが「葉酸」の摂取です。水溶性のビタミンの一種である葉酸の欠乏は、脳細胞と血管を障害するホモシステインの濃度を上昇させ、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー型認知症発症のリスクを上げます。加えて、うつ病も葉酸の欠乏が一つの原因と指摘されています。
葉酸摂取の重要性は海外では広く浸透していて、欧米をはじめとする86カ国で、穀類への葉酸添加が義務付けられています。それに比べると、日本は遅れていると言わざるを得ません。日本人は1日平均約290マイクログラムの葉酸を摂取していますが、日本人の約6割は遺伝子的に葉酸をうまく利用できない体質であることが確定していますから、400マイクログラムに上げる必要があるでしょう。
実際、女子栄養大学のキャンパスがある埼玉県坂戸市で、市民に葉酸摂取を推奨する「さかど葉酸プロジェクト」を実施したところ、医療費を全国最低水準にできたなどの成果を上げています。
葉酸を摂取するには、何といってもホウレンソウを食べるのが効果的です。他には、レバー、ブロッコリー、トウモロコシにも葉酸が豊富に含まれています。
低血糖のリスク
また、私が学食で昼食を取る時は、魚料理が主菜の定食メニューを選ぶようにしています。魚の摂取を強く意識しているのは、私を含めて日本人の約6割は、魚介類に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を、遺伝子的にうまく合成できないからです。
良質な脂肪酸として知られるEPAとDHAは脳を活性化させる働きがあるとされ、魚介類摂取量最少群と最多群を比較して、前者の認知症リスクを1とした場合、後者は0.39まで下がります。
さらに、食事において特に気を付けなければいけないのが低血糖です。
楽して痩せたいといった思いなどから、現在、糖質制限食がはやっています。糖質ゼロに糖質オフ。糖尿病患者などが糖質制限食にすれば、確かに短期的には血糖値が下がり、体重も落とせます。しかし、長期的に見れば、摂取カロリーの50~55%を糖質、すなわち炭水化物が占めている人が一番長生きするというデータが出ているのです。
実際、救急医療の現場では低血糖発作で亡くなる人が増えていて、低血糖による交通事故も増加しているいいます。とりわけ高齢者は、ただでさえ加齢に伴い判断力が衰えているところに、低血糖によって脳の働きがさらに低下してしまう。脳は体重の2%の重量しか占めていないにもかかわらず、使用するエネルギーは全体の20%を占めています。その脳のエネルギー源は血糖ですから、低血糖がいかに危険かがお分かりいただけると思います。
そして低血糖状態を避けたり、EPAやDHAを摂取したりして脳の健康を保つことは、「食事」「運動」「睡眠」に加えた健康の基本である「精神」の健全性にもつながります。
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