華やかな業界に「過剰な接待」文化がはびこる理由…背景にある「アレオレ詐欺」の実態とは

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マウンティング気質

 ここ数年間、テレビを中心としたメディア業界の「過剰な接待」的な問題が取り沙汰されており、加害者が謝罪したり活動自粛・引退となったりすることが常態化している。筆者(中川淳一郎:広告会社勤務→雑誌編集者→ネットニュース編集者)は、こうした事態の背景には、エンタメ業種に就く人間の「マウンティング気質」「マウンティング文化」が影響しているのでは、と感じた。

 この件については、かねての知り合いとネット経由やリアルのやり取りでも話してきたのだが、そうした中での一つの結論として「メディア・エンタメ業界に従事する人間は、やたらとマウンティング気質があり、自分の方がデカい仕事をしていることをアピールしたい考えがある。それが様々な『接待』に繋がっているのでは」というものがあった。

 主に、テレビ、出版、広告の3種なのだが、この3つの業種については「わしが手掛けた」と言いたい人が多いのである。匿名掲示板・5ちゃんねるが2ちゃんねるだった頃、星野仙一氏のAA(アスキーアート=記号や文字を組み合わせて作った画像)で「わしが育てた」というものが流行したことがある。

アレオレ詐欺

 これは、中日ドラゴンズの監督を経験した星野氏が「大半の中日の選手は私が育てたんだもの、力のある選手ばかりだよ」と2006年に「星野SDと田淵解説トークショー」で発言したことが元ネタである。

 それはさておきとにかく、この業界では「アレオレ詐欺」というものが蔓延しているのである。なんでもいいが、あるコンテンツが大ヒットしたとしよう。映画、広告、書籍、高視聴率の番組、Yahoo!ニュースのトップを取って多数のアクセスを稼いだ記事など。

 するとここに少しでもかかわった人が「アレはオレが手掛けた」と言い出すのである。「オレオレ詐欺」ならぬ、「アレオレ詐欺」となるのだ。あとは「オレがあの俳優と繋がっているからあの企画は成立し、素晴らしい作品になったのだ」などと言う。さらに、スポンサーになってくれる大企業の社長やら幹部からカネを引き出したことも「オレが手掛けた」になる。このようにして、この業界では自身の功績を過度に周囲に伝える人間が多いのだ。

 私自身は、広告業界2位の博報堂をたった4年で辞めただけにたいした仕事はしていないので、「アレはオレが手掛けた」なんてことは言えない。その後は底辺フリーランスとして、出版・広告・ウェブメディア業界と付き合ってきたが、基本的には後ろ盾がないフリーとして「アレはオレが手掛けた」なんてことは言えない。あくまでも「いやぁ~、仕事の場を与えていただきありがとうございます」しか言えない。だから私は「アレオレ詐欺」はできないのである。

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