「スーツに革靴で登山」「イジるとふてくされる」 石破首相の「変人伝説」を支援者らが明かす

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 筋を通す政治家と思われていたのが一転、永田町の力学に翻弄されて揺蕩(たゆた)うばかり……。第103代内閣総理大臣、石破茂氏(67)。一挙手一投足が常に批判されるという“未曾有の宰相”はいかにして育まれたのか。メディア初登場の地元応援団が“素顔”を明かす。【窪田順生/ノンフィクション・ライター】

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 期待が大きかっただけに落胆も大きい。石破茂氏ほど、この言葉を体現した宰相はいないのではないか。

「次の首相になってほしい政治家ナンバーワン」「自民党を変えるにはこの男しかいない」などと散々持ち上げられてきたのに、いざ実際に内閣総理大臣に就任すると「発言がブレた」「モーニング姿がだらしない」「食べ方が下品」とこき下ろされ、政権発足直後の支持率は安倍政権以降、「最低」という調査もあった。普通、新政権最初の100日は支持率も高く、好意的な報道が続くことで「ハネムーン期間」と呼ばれるが、「成田離婚」になりそうなほど石破政権は支持率が低迷している。

 あれほど国民的人気を誇った政治家が、ここまで嫌われてしまったのはなぜか。その答えを求めて、私は鳥取県鳥取市へと向かった。同市を含めた「鳥取1区」で石破氏は1986年の初出馬から13回連続当選している。しかも、2012年以降は得票率80%超えと圧倒的な強さだ。そんな「石破王国」で話を聞けば、今の石破氏に欠けているものが見えてくるかもしれない。

「サービス精神とは無縁な人」

 2024年の年末、まず市内のカフェでインタビューすることができたのは、石破氏の後援会に所属する、山本さんと田中さん(共に仮名)の40代女性二人だ。両者とも家族ぐるみで石破氏と親交があるという。

「私からすれば、石破さんは子どもの時からいる親戚のおじさんみたいな感じです」

 そう語る山本さんは、幼少の頃の自分とまだ20代の石破氏とのツーショット写真を見せてくれた。後援会主催のクリスマスパーティーで撮られたものらしく、石破氏もサンタクロースに扮して長いあごひげを着けている。石破氏といえば、2018年にフィギュアミュージアムの開館セレモニーで披露した「魔人ブウ」のコスプレのイメージが強いが、若い時からサービス精神が旺盛だったのだろうか。そのような質問を投げかけると、二人は苦笑いをした。

「私たちの中では、石破さんはサービス精神とか親しみやすいというイメージと無縁の人ですよ。決して無愛想な人ではありませんけど、自分から場が和むような冗談を言ったり、みんなを喜ばせたりするような人じゃない」(山本さん)

「基本的にバカが付くほどの真面目な人なので、政治家として必要だと思えばなんでもやる。よく言われる魔人ブウのコスプレも、イベント会場に行ったら用意されていて、断れなかったと聞いてます」(田中さん)

“石破さんじゃなくて佳子さんに来てもらった方が盛り上がる”

 同様の意見は、他の後援会メンバーからも多く聞かれた。得票率80%超という圧倒的な強さを誇る地盤なのだから「石破愛」が熱く語られるのかと思いきやそうでもない。その代わりに聞こえてくるのが、石破氏の慶應義塾大学時代の同級生である佳子夫人を褒めたたえる声だ。

「明るくて気さくで、お話ししていてもすごくいい人。正直、石破さんのことはよく分からないけれど、あんな素敵な女性が選んだ旦那さんだから、きっといい人に違いないということで応援しています」(石破支持者60代女性)

「石破さんは選挙の時もほとんど帰ってこないので、いつも佳子さんが地域のあいさつ回りをしているのですが、支持者の中には“石破さんじゃなくて佳子さんに来てもらった方が盛り上がる”なんて冗談を言う人もいるほどです」(後援会70代男性)

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