「御上先生」が「金八先生」を批判するワケ 「ドラゴン桜」「VIVANT」「アンチヒーロー」の名シーンを彷彿

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視聴率2ケタキープ

 これほど過去作の要所を総動員したドラマも珍しい。俳優の松坂桃李が主演するTBS系日曜劇場「御上先生」(日曜午後9時)のことだ。19日放送の第1話の平均視聴率は世帯12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、個人7.5%で昨年10月クールの「海に眠るダイヤモンド」、23年7月期の堺雅人主演「VIVANT」の初回をいずれも上回る好発進。26日放送の第2話は世帯11.2%と下げたが、2ケタをキープし底堅さを見せた。(※以下、ネタバレを含みます)

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「変えられないなら壊すだけ」と1人の官僚と令和の高校生たちが腐った教育現場に立ち向かう大逆転教育再生ストーリー。第1話は、国家公務員試験会場で殺人事件が発生するという衝撃的なシーンから始まった。その後、文科省官僚の御上孝(松坂桃李)が官僚派遣制度で私立隣徳学院に赴任し3年2組の教壇に立つ。

 いきなり生徒たちに「この国の人は高い学歴を持ち、それにふさわしい社会的地位や収入のある人間のことをエリートだと思っている。でも、そんなものはエリートなんかじゃない。ただの“上級国民予備軍”だ」と挑発した。

 そして、教師の不倫を学校新聞で暴き女性教師を退職に追い込んだ報道部の神崎拓斗(奥平大兼)に数学のテストの弱点を指摘する。ジャーナリスト志望の神崎は悔しさのあまり御上に反撃。「天下りあっせん疑惑の責任をとって左遷された」と新聞に書くと、御上は記事を否定し「高い理想を持っているのに私への取材も確認もしなかった。これは“ゴシップ記事”だ」とあざ笑う。

 連続ドラマをウォッチングしている放送ライターが指摘する。

「著名な新聞記者を親に持つ神崎は記者クラブ制度を批判しました。唐突のように見えますが、これは松坂の主演映画『新聞記者』(2019)を手掛けた詩森ろば氏が脚本を担当している影響があるかもしれません。同作は第43回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞したほど。神崎のゴシップ記事は、日本のマスコミの現状についての問題提起であるのは明らかです。今後、報道のあり方についてさらに突っ込んでいきそうです」

 正義感に燃える神崎だが、御上の鋭い観察眼によって自身の過ちに気付いていく。例えば御上は神崎に「なぜ女性教師だけがやめることになったのか」と問い詰めるが、神崎は日本の各組織における女性の立場の弱さを理解していなかった。不倫事件で責任をとらされるのはいつも女性というこの国の“不条理”を御上は破壊していく。それは第2話でも繰り返された。

「試験会場で男性受験生をナイフで刺した犯人は顔が見えない状態でした。第2話の面会シーンで犯人の顔の輪郭が徐々に映し出されるとそれは女性。殺人犯は男性だろうという先入観をここでも壊しにかかっています。しかも、殺人犯を演じているのは堀田真由です。堀田は昨年4月期の日曜劇場『アンチヒーロー』で弁護士の紫ノ宮飛鳥役を演じていましたから、今回は真逆の役どころとなります」(前出の放送ライター)

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