シーズン3配信日決定「イカゲーム」が世界を熱狂させる理由 「民主主義」と「平等」の欺瞞が浮き彫りに

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 2021年9月にシーズン1が世に出ると、瞬く間に世界で話題となったNetflixドラマ「イカゲーム」。それから約3年後の昨年12月にシーズン2が配信され、先日は今年6月からのシーズン3配信開始がアナウンスされた。一体なぜ「イカゲーム」は注目されるのか。映画ジャーナリストの渥美志保氏が解説する。

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ゲームへの参加は「自分で決めたこと」

「みなさんは、何を強制されることもなく、自発的にこのゲームに志願しました。今からもう一度、選択の機会を差し上げます」

「イカゲーム」シーズン1の第一話で、ゲーム会場に集まった参加者たちにそう告げた「□マスク」は、さらに「借金取りに追われるスレギ(クズ)のような人生」と「我々が差し上げる最後の機会」の二者択一を迫る。

 そもそも現ナマに弱い参加者たちは、さらに天井から吊り下がる巨大な透明の「賞金貯金箱」に欲望を刺激され、全員が「参加同意書」にサインする。同意書は「勝手に中断できない」「ゲームを拒否したら脱落」「参加者の過半数の同意でゲームの中断が可能」の3項目のみのあっけないものだ。

 ここまでの展開で参加者は、ゲーム主催者が仕掛けたいくつもの罠にハメられている。

 まずは最初の二者択一。借金まみれの参加者たちは確かに人生の崖っぷちにあるが、それでも「残された選択肢はたった2つのみ」であるはずがない。選択を強いられた状況で両極端の「一か八か」のみを提示することは、他の選択肢がないかのように思わせる認知バイアスを誘発するものだ。

「ゲームのルール」は破れない

 ふたつめは「参加同意書」へのサインで、これは相手に特定の行動を取らせるセールス(もしくは詐欺)の一般的なテクニック「チャルディーニの法則」として知られている。

 例えば、何らかの契約をする時に「約束しましたよね? サインしましたよね?」と迫られ、仕方ないと飲み込んだ経験は誰にでも一度はあるだろう。たとえ法律的に反故にする権利があっても、人間は口頭や書面でなされた自身の決断との一貫性に縛られてしまいがちだ。「イカゲーム」でも、これにより参加者たちは、ゲーム主催者から押し付けられたルールを破ることが心理的に難しくなる。

 巧妙なのは最初のゲーム「だるまさんが転んだ」が終わった後の展開だ。参加者たちはここで初めて「脱落=死ぬこと」と知るのだが、その直後に途方もない賞金額を、「貯金箱」にバサバサと降ってくる札束という強烈なビジュアルで知らされる。こうして鼻先にニンジンをぶら下げられた参加者たちの多くは、紆余曲折しながらも結局は「我々が差し上げる最後の機会」を選び、同時に「脱落=死ぬこと」という理不尽極まりないルールも、仕方ないものとして受け入れていくことになる。

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