「堺正章」が大河ドラマ出演時に役のモデルにした知られざる“意外な人物” 芸歴70年の初著書で語った家族への想い

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 歌手、俳優、司会者、そしてかくし芸…。枠にとらわれない活動で今も芸能界の第一線に立つ堺正章氏(78)。その芸歴は実に70年に及ぶが、実は「堺」が父から引き継いだ芸名で、本名は「栗原正章」であることを知る人は少ないのではないだろうか。2020年の大河ドラマの役作りでは、密かにその父・堺駿二氏を意識していたという堺正章氏だが、なぜかそれに気が付いた「名俳優」がいて――。

(前後編の前編)

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※この記事は『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(堺正章著、飛鳥新社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。

大河ドラマ「麒麟がくる」で演じた「架空のキャラクター」

 僕は役者ではない。役者もやるけれど、歌手や司会など、多方面で活動しているタレントだ。そんな僕が、役者一本で真摯に向き合っている真の役者さんが大勢いる芸能の世界で役者を名乗ることは、はなはだ失礼だと感じてしまう。

 だから芝居をやるときは、そのぶん誰よりも愚直に、一生懸命に役に向き合わなければ申し訳が立たないと思っている。そして考えることは、どうしたら自分が演じる人物に、自分が考えるその人物像に限りなく近づけるのか、そして、どうしたら存在感を感じさせる役を演じられるのかということ。存在感っていったいなんだろうか。

 2020年、僕はNHK大河ドラマ「麒麟がくる」に望月東庵という医者役で出演した。この役は、登場人物の中で、唯一実際に存在しなかった架空の人。だから、演技プランの自由度が高く、自分なりの思いを投影しやすかった。そこで考えたのは、父・堺駿二をイメージしたらどうだろうか、ということ。

 喜劇役者だった父なら、きっとこんなふうにセリフを言うんじゃないか。父のような居住まいにすれば、ストーリーの中でぴりっとしたアクセントになるんじゃないか。実は、その演技プランは監督にも誰にも明かさずに、自分の中の裏テーマとして、そっと心に秘めることに決めていた。もし物語にフィットしていなければ監督からひとことあるだろうし、なければ許容されているということだろう。

「父がいたからこそ、僕は今ここに立っていられるのだ――」

 僕は役者の仕事をするとき、よくそんなふうに思う。「麒麟がくる」のときは、あらためてそれを実感すると同時に、その感謝の気持ちを胸に、父に喜んでもらいたいという思いで望月東庵を演じた。でもそれは、あくまでも心に秘めていたものだった。

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