ソフトバンクの「上沢直之」獲得は“金満球団の横暴”か…「ルール上は問題ない」けれど専門家は「契約で防止する必要性」も指摘
昭和と令和の違い
昭和のプロ野球をご存知の方なら「練習生契約」をご記憶かもしれない。支配下選手の上限は60人のため、それを超えて選手を入団させる場合、公式戦の出場ができない練習生として契約を結んでいた。多くは「球団職員」の肩書で入団した。
今の育成選手に似た制度だったのだが、複数のプロ野球チームが“脱法的”に活用していく。有望なアマ選手を囲い込み、他球団のスカウトに接触されないよう、球団職員の名目で“青田刈り”してしまうのだ。
選手の個人名は伏せるが、パ・リーグの名捕手や、セ・リーグの強打者、人気球団の主軸投手などが最初は球団職員としてチームに入り、80年代のドラフト会議で上位指名を受けて入団している。
「昭和のプロ野球では、こうした“抜け道”で入団することもファンは楽しんでいました。しかし今は、そういう時代ではないと思います。ファンが歓迎しないのです。ファン意識の変化がソフトバンクに対する“モヤモヤ感”を生み、SNS上の批判につながっているのではないでしょうか。となると、ある程度の制限を選手との契約に明文化すべきではないかと考えます。実際、参考となる事例が韓国にあるのです」(同・小林氏)
韓国プロ野球(KBO)のポスティングシステムでは、KBOに復帰する際はポスティング申請時の所属球団としか契約できない。さらに復帰後4年間は当該球団が保留権を持つことが決まっている。
FA選手は特別
「私はさすがに4年間は長いと思います。そこで選手と球団が契約を結ぶ際、『ポスティングを行使し、その後にNPB(日本野球機構)に戻る場合は、当チームが保留権を1年間持つことができる』という条項を加えるべきではないかと考えます。アメリカのチームでFAになれば、理論的にはどのチームでも契約できます。それに制限を加えるのですから、選手の権利が侵害されたと批判するファンもいるかもしれません。しかしプロスポーツはドラフト制度など、無条件の自由にある程度の制限を課すことで、逆に魅力を増やしている事例が少なくないのです。何よりファンが『古巣に帰る』というストーリーを支持しているわけですから、それを守る契約は妥当性が高いと考えます。保留権は1年間だけですし、戻ってくる選手に『保留権は放棄します。他球団と自由に交渉してください』と通告することもあり得ます」(同・小林氏)
こうした契約は、「あくまでポスティングを申請した選手に限られるべき」と小林氏は提案する。
「国内でも海外でも、FA権を獲得した選手に『古巣に戻れ』という契約はふさわしくない気がします。FA権を取得した選手の多くは飛びきりのスター選手です。彼らは実績を積み重ね、その結果として“自由”という栄光を手にしたのです。契約でも彼らの意思を守る内容にすることが、ファンの希望とも合致するのではないでしょうか」(同・小林氏)
註1:ソフトバンクがRソックス傘下3AウースターFA・上沢直之の獲得調査(スポーツ報知:2024年12月13日)
註2:上沢ソフト4年10億(日刊スポーツ:2024年12月17日)
註3:「育て方が違ったのかな」日本ハム・新庄監督”絶縁”の上沢直之に打倒を宣言 米挑戦→ソフトバンク移籍の流れに危惧 不義理右腕連絡なし(夕刊フジ:1月9日)
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