ソフトバンクの「上沢直之」獲得は“金満球団の横暴”か…「ルール上は問題ない」けれど専門家は「契約で防止する必要性」も指摘
「育て方がちょっと違ったのかなあ」
カブスに移籍して14年と15年のシーズンを送るが状況は変わらず、最終的にFAが決まった。和田氏は4年間、アメリカで努力を積み重ねた。そして日本に戻る際も“古巣”のソフトバンクを選んだ。そのため野球ファンから批判の声は聞かれなかった。
一方、上沢の場合は野球ファンがソフトバンクに対する批判をSNSに投稿。さらに日ハムの新庄剛志監督は堂々と報道陣の前で上沢とソフトバンクに苦言を呈した。まずファンの声をXからご紹介しよう。
《義理人情を完全無視したFA移籍には、ソフトバンクさんのファンからの批判が多かった事も事実》
《ソフトバンクが強くなるのは構わないとおもうが、上沢選手の件はまともな移籍とはちがう》
《有原式、上沢式FAを根本的に変えないともう野球は観ないな。私個人が観なくてもクソどうでもいい事だけど、ソフトバンクみたいな金持ち球団ばっかり強くなるルールと抜け道は絶対に無くさないといけないんじゃないかな?》
新庄監督も積極的に発言した。最初は1月8日、千葉県鎌ケ谷市内の球団施設で行われたスタッフ会議に出席後、報道陣と行われた一問一答からご紹介する(註3)。
まず「アメリカに行ってるときもやり取りはしていた。彼がああいう決断をして、育て方がちょっと違ったのかなあ」と無念さをにじませた。
新庄監督の猛抗議
上沢が残留を選んでいても今シーズンでFA権を獲得するため、それこそ堂々とソフトバンクへ移籍できたかもしれない。その可能性に新庄監督が触れ、以下のように失望を率直に語った。
「すごい悲しいし、もう1年、一緒にやりたかった。すごくお世話になったファンのために1年間、とんでもない活躍して、『さあどうぞ、どこにでも行ってくださいってね、あなたの自由ですよ』っていうところは期待しましたけどね」
ソフトバンクへの移籍が報じられると、新庄監督が上沢のInstagramのフォローを外したことが明らかになり、ネット上で話題を集めていた。夕刊フジの記者が真意を質問すると、「初めて(自分から)外した」と率直に答え「ちょっと悲しさが強くて、会話をするより先に外しておこうと思って」と説明した。さらに新庄監督は、以下のような痛烈な批判も口にした。
「ポスティングで行って、(大リーグで)あまり活躍できなくてソフトバンクに行くという流れは、ホークスファンも心から喜べるのかな? 正直、獲りにいってほしくなかった」
新庄監督の憤りは止まらない。1月20日にプロ野球の12球団監督会議が開催された。終わって登場した新庄監督に報道陣が「何を提案したのか」と質問すると、以下のように答えた。
「ポスティングで行って、1年ダメで、ソフトバンクに行くっていう、この流れはやめてほしいというのは言いました。それはちょっと良くないかなってことは言いました」
「古巣に帰ってほしい」という願い
北海道ニュースUHBは1月7日、「【物議醸す上沢直之投手のソフトバンク入り】ポスティングシステムの課題『ファンの納得感考えるべき』…元ホークス取締役の有識者が解説―ファイターズの思惑は?」の記事を配信した。
記事には福岡ソフトバンクホークス元取締役で現在、桜美林大学の教授である小林至氏が登場。小林氏はポスティングシステムの課題など、様々な論点を提示した。
そこでデイリー新潮は小林氏に上沢問題そのものについて取材を依頼し、話を聞いた。小林氏は「入団を批判するファンの気持ちはとてもよく分かります」と言う。
「広島のエースだった黒田博樹さんはアメリカに渡り、ドジャースとヤンキースで大活躍しました。最後は広島に帰ったことも大きな話題を集めましたが、もし巨人やソフトバンクに入団していたら批判が殺到したでしょう。野球ファンが『最後は古巣に戻ってほしい』と願うのは日本もアメリカも同じです。青木宣親さんもヤクルトに戻りましたし、イチローとケン・グリフィー・ジュニアのお二人は古巣のマリナーズで引退しました。ソフトバンクに上沢さんが入団したことは、ルールの観点から考えれば何の問題もありません。とはいえ同じパ・リーグという同一リーグに所属し、日ハムより資金力が豊富なソフトバンクが獲得したとなると、多くのファンが納得しないのは当然だと言えるでしょう」
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