“全落ち”でも「中学受験」の経験が強みに 高校・大学受験で逆転するための意外な方法

ライフ

  • ブックマーク

 過熱傾向にある中学受験において、いわゆる「全落ち」のリスクが高まっている。こうした不安を前に、親は子とどう向き合うべきなのか。前編の記事【中学受験でわが子が「全落ち」したら…親が「かけるべき言葉」と「かけてはいけない言葉」】では、全国5000にも及ぶ塾の関係者を取材してきた教育ジャーナリストの西田浩史氏が、結果が出た直後の親の心構えや声のかけ方などについて現実的なアドバイスを送った。後編では、高校受験や大学受験での“逆転”に向けて打つべき一手について、西田氏が続けて解説する。(西田浩史/追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)

(前後編の後編)

 ***

 中学入試で「全落ち」したとしても、志望校に向けて培ってきた学力は無駄にはならない。中学入試経験者の強みはいくつかあるが、まず何といっても、もうすでに入試そのものを一度経験していること。次の高校受験では、緊張せずにスムーズなスタートを切ることが可能になるだろう。

 そして、圧倒的な「国語」「算数」の力も強みになる。小学校低学年の早い段階から身につけた、文章を読んだり書いたりまとめたりする力、大量の演習をこなすことで身についた計算力や問題解決力は、この先の高校受験、大学受験、難関資格試験、海外留学などでかなりのアドバンテージになるのだ。

 ひとまず直近の「受験」に絞った場合、将来に向けてこれらの力をどう繋げていけば良いか。大きく分けて2つの方向性がある。

早い段階で大学受験を視野に入れる

 まず、中学入試で得た学力を活かし、大学受験での挽回を早くから目指すようにしよう。旧帝大、早慶上智、MARCH、関関同立、医学部などの受験には中学受験経験者は有利だ。

「中学受験経験者は、高校受験で初めて受験勉強をスタートした人より、一般選抜はもちろん、共通テストの基礎学力の土台のできが違います。また、中学受験で培った表現力や情報処理能力は、プレゼンや小論文が重視される総合型選抜・学校型選抜や、一般選抜の『総合問題』など教科横断型の形式の入試にも有利です」(東京・大手塾)

 つまり、中学受験経験者は一般選抜と総合型選抜・学校型選抜の両方を狙えるという意味で、大学入試の選択肢が広がっているのだ。そのメリットを最大限生かすために、中学入試の学習で得られた国語、算数(数学)を軸に、英語も含めてなるべく早期に動きはじめよう。

 一方、最近では一般選抜においても「総合問題」という入試制度ができ、増加傾向にある。総合問題とは、教科の枠を超えた広い知識と理解度が問われる複合問題で、国公立大学の2次試験や、早稲田大学や青山学院大学など難関私立大学を中心に広がりつつある。これが、近いうち大学入試の新しい軸になる可能性も高い。さまざまな形式の問題に慣れている中学受験経験者は、こういった入学制度にも強いはずだ。

 塾関係者によれば、高校1年生の段階で、大学の学部・学科をいち早く決めて、それに沿って無駄のない勉強をする子は圧倒的に合格率が高いという。ならば、中学段階の早いうちから子どもと大学の学部・学科について研究したり、子どもの興味・関心を掘り下げたりするなど、子どもが具体的な目標をもてるように仕掛けていくのが親の役割だ。

 保護者の中には「大学へは一般選抜で行くべきだ」と思う人も多いかもしれないが、今や2人に1人が一般選抜以外の方法で大学に進学している。一般選抜では狙えない難関大学に総合型選抜で挑戦することも可能だ。合格できる可能性が少しでも高まるのであれば、一般選抜だろうが、総合型選抜だろうが、利用しない手はない。

次ページ:高校受験でリベンジする

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。