中学受験でわが子が「全落ち」したら…親が「かけるべき言葉」と「かけてはいけない言葉」

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 1月から2月にかけて、今まさに佳境を迎えている中学受験。昨今人気が過熱傾向にあり、中堅校と位置付けられてきた学校の難易度が急上昇するなどして、いわゆる「全落ち」のリスクが高まっている。わが子がそのような状況に陥った場合、親としてどう向き合うべきか。そして、その経験をどう“次”へと活かせばよいのか。全国5000にも及ぶ塾の関係者を取材してきた教育ジャーナリストが、現実を見据えたアドバイスを送る。(西田浩史/追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)

(前後編の前編)

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 この少子化の時代にあっても、志願者数が過去3番目に多い5万2300人、受験率にいたっては昨年に引き続き過去最高水準の18%以上になるとみられている2025年の中学入試。

 目下の話題は、1月10日に始まった埼玉の入試で、開智学園の開智中学校、開智所沢中等教育が2校あわせて約3万人もの志願者を集め、出願者数で日本トップに躍り出たことだ。

 実際の受験者数はもっと少ないものの、3万人といえば、大学受験でいう、上智大学、駒澤大学、京都産業大学の志願者数に匹敵する。学習院大学、南山大学、中京大学、神奈川大学などの有力大学よりも多い、すさまじい数字である。

 24年新設、埼玉初の私立中等教育学校である開智所沢は、都内からのアクセスの良さの他、複数回受験すると加点されるなどの独自制度や、本家・開智中学の進学実績の良さもあって、新設校ながら塾関係者からの期待値も高まっていた。さらに、開智中学と入試問題が共通であり、1回のテストで複数の系列校に出願することが可能。受験料の2万円を支払いさえすれば、最大6回の受験ができるといった理由から、桐朋中学、明治大学附属八王子中学、中央大学附属中学など難関校を併願する東京都内からの受験者を広く集めた。

高まる「全落ち」のリスク

 1月入試が一般的な埼玉の学校は、2月入試の東京・神奈川の学校を本命にする成績上位者が併願校(つまり“滑り止め”)として受験することが多い。しかし、

「開智所沢は、もともと塾関係者からの注目度が高かったことから、予想を上回るほど出願数が急増し、埼玉の学校は“お試し”のつもりだった成績上位層さえも、落ちることが相次ぎました。理科の入試での作問ミスや、学校側のシステムトラブルなどの混乱も見られました」(さいたま市・大手中学受験塾)

 開智所沢の次年度の入試では、入試難度(偏差値)が本家の開智中学を超えるのではないかと予想する塾関係者も多い。学校の序列も、現在の中堅から有力上位校に食い込む可能性もあるだろう。

 近年の中学入試は、開智所沢のように特定の学校に人気が集中して、入試難度が短期間で急上昇するのも珍しくない。結果、玉突き的に難度が近い学校にも影響し、さらにこれが上位校にも波及する。よって、過去の入試データから合格圏を読むことが難しく、併願パターンも設定しにくくなってきているのだ。

 さらに近年は、中学受験を経験した親が増えたのか、子どもの実力以上の学校を積極的に“チャレンジ受験”させる家庭が増えている。こうした背景が絡み合い、「全落ち」する子を増加させている。

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