「掛布雅之」選出でも、「江川卓」はなぜ野球殿堂に入れない? “野球ムラ”から嫌われた半生を、「空白の一日」を取材したベテラン記者が読み解く

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「希望を持って待ちます」

 その江川は、1年前、自らのYouTubeチャンネル「江川卓のたかされ」で、殿堂入りについてこう語っている。

「プロ野球に入る時に、いろんな目標がありまして。野球殿堂というのがあるのなら、そういうのに入れる選手にならなきゃねと思って入った」
「資格があるなら、希望を持って待ちます」

 野球殿堂入りの要件は、以下の4点だ。

(1)試合で表現した記録、技術が優れている者
(2)所属チーム及び野球の発展に顕著な功績をあげた者
(3)野球に対し誠実であり、スポーツマンシップを体現した者
(4)ファンに野球の魅力を伝えた者

 江川は果たしてこれに当てはまらないのだろうか。実働9年間で獲得した数々のタイトル、巨人のエースとして日本一1回、リーグ優勝3回を支えた存在感、ライバル・掛布やランディ・バースらとの名勝負、オールスターでの8者連続奪三振、そしてその後の解説者としての理知的で的確な解説――彼は「ファンに野球の魅力を伝えた」スターだったと思う。

 たかが殿堂、されど殿堂――。

 江川が正当に評価されることを願う。

吉見健明(よしみ・たけあき)
スポーツジャーナリスト。1946年、東京生まれ。法政一高、法政大で野球部に所属し、同期・田淵幸一の控え捕手を務めた。同じく同期の山本浩二、明治大・星野仙一らとも親交を深める。卒業後は銀行勤務などを経てスポーツニッポンの記者となり、野村克也氏の南海監督解任などをスクープする。報道部副部長を務めた後、1991年に独立し、以後はフリーのスポーツジャーナリストとして活動している。

デイリー新潮編集部

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