「フジ10時間会見」はやはり大失敗…危機管理の専門家が、致命的な“説明の過ち”を指摘する

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

直接会う前にすべきこととは

「私は1999年5月に上梓した著書『企業危機管理 実戦論』(文春新書)の中で『女性労働者をコンパニオンやホステスと勘違いしているような言動は厳に慎まなければならない』と書きました。あれから四半世紀を経た今、フジテレビは時代の変化を見落としたと言わざるを得ないのです。昨今の企業は、秘書室や受付の女性社員を社外との懇親の場に連れては行きません。“李下に冠を正さず”を徹底しているからです。また今回の問題について『女性の心身のケアを最優先したため』とか『被害女性が誰にも知られずに仕事に復帰したいと言っていたから』という説明 も、生兵法と言わざるを得ません。心に深い傷を負った被害者の心理はジェットコースターのように変化するものです 。コトコトと少しずつ登ったかと思うと、一気に降下してしまうのです。だから、一度聞いた話を金科玉条のごとく扱うのは間違っているのです」(田中氏)

 港社長は被害女性に「お会いして直接お詫びしたい」とも語っていたが、

「私は直接会う前にやるべきことがあると思います。それは心のこもった謝罪の手紙を書くことです。手紙?と思われるかもしれませんが、これは危機管理において絶大な効果があるものです。いきなり会いに行くのは相手にプレッシャーを与えますし、相手が会いたくない時もあります。しかし、手紙は読みたい時に読めます。口に出した言葉は一瞬にして消えてしまいますが、手紙は何度でも読み返すことができる。しかも、手紙は時間をかけて書くので、心に響く言葉を用いることができるのです。末尾に『フジテレビは貴女の人生に責任を持って支援をし続けます』という言葉を添えるとか」(田中氏)

 フジテレビは今からでも信頼を回復できるだろうか。

「そもそもフジテレビは、中居氏から被害を受けた側にいたはずです。被害女性と共に同じ側に立ち続けることが可能でした。ところが、社員A氏が関わっていると報じられたことで雲行きが怪しくなり、その上に危機管理を失敗したことから加害者の側に移ってしまった。とはいえ、会見後に『週刊文春』がA氏の関与について誤りを認めたことは追い風です。今後、正しい危機管理を行えば信頼は回復できるでしょう。ただし、これまでのフジテレビは『気が動転して思考停止に陥っている』ように見えます。一刻も早くその状態から抜け出すことが前提ですが」(田中氏)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。