「フジ10時間会見」はやはり大失敗…危機管理の専門家が、致命的な“説明の過ち”を指摘する

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 1月27日に行われたフジテレビの“やり直し記者会見”は10時間超に及んだ。もっとも、ここまで長引いたのはオープンかつ無制限で行われたためで、中でもフリーの記者らによる内容のない繰り返しの質問が多かったことが原因と見る向きは多い。おかげでフジには同情論すら湧いている。では、危機管理のプロの目にはどう映ったか――。

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「敢えてフジテレビの番組名にあやかって言えば『何だコレ!?ミステリー』という印象でした。何のために行ったのか分からなかったからです」

 と呆れて言うのは、「企業こころの危機管理」(海原純子医師との共著)の著作もある株式会社リスク・ヘッジの取締役の田中辰巳氏だ。どういう意味だろう。

「本来ならばこうした会見は『被害者の処罰感情を和らげる』とか『スポンサー企業の信頼を取り戻す』という目的を持って行うものです。そんな視点での効果的な発言が会見では見当たりませんでした」(田中氏)

 17日に行われた会見は記者クラブのみに限定されていたため大批判を受けた。それを受けて今回はオープンで無制限にしたが、それは意味がなかったということだろうか。

「1回目のように、謝罪会見で制限を設けるのは論外です。しかし、長ければいいというものでもありません。短時間で密度の濃い会見が望ましいのですから。とはいえ、取締役相談役の日枝久氏の進退や社員A氏の関与について訊かれることは分かっていたはずです。ならば、想定される問答(Q&A)を作って、会場に集まった記者に配布しておけばよかったのです。そうすれば同じ質問が繰り返されることはなかったでしょう。のらりくらりとした回答ばかりしたことも無意味に長くなってしまった原因です。はぐらかすなんて手法は、失礼ながら生兵法と言わざるを得ませんね」(田中氏)

 日枝氏についてはどんな回答をすべきだったのだろう。

いびつな力関係

「港(浩一)社長が答えるのであれば、『会長と社長の私は中居正広氏の件で危機管理を間違えました。また、先日の会見は報道機関としてあるまじき行為でした。よって、その責任を取って本日付で全ての役職を辞任いたします。しかし、危機管理を失敗した者を処分しただけでは再発防止にはなりません。根底にある原因にまで遡って、全ての取締役の作為や不作為を炙り出す必要があります。それを第三者調査委員会に委ねますが、当然ながら日枝取締役相談役も含まれます』と答えればよかったと思います」(田中氏)

「根底にある原因」とはどんなものだろうか。

「フジテレビと芸能界のいびつな力関係も原因の一つではないかと思います。フジテレビは他局に比べバラエティ番組に重きを置いていたと聞きます。それゆえに有名タレントがフジテレビ関係者の尊厳を軽んじてきたところがあったのではないでしょうか。もちろんそこはフジにも責任がある。ならば、なぜそんな状態が生まれたのか、誰が作ってしまったのか、そこにメスを入れて病巣を取り除かなければ、到底、被害者やスポンサー企業が納得する再発防止策にはなりません」(田中氏)

 では、フジテレビは危機管理として何を間違えたのか。

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