日本人だけが知らないトランプ大統領「WHO脱退」表明の真相…「コロナの起源」を巡る“米世論の不信感”が後押ししていた

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アマチュアグループが衝撃的な事実を発掘

 呼び水となったのは21年3月末にWHOが中国と共同で出した現地調査の報告書だ。313ページもある電話帳のような代物なのに、研究所からの流出の可能性についてはたった4ページ割いただけで「(流出の)可能性は低い」と結論づけていた。

 これにたまりかねた著名な学者らが5月半ばに沈黙を破り、「十分なデータが得られるまでは両説を真剣に検討すべき」とする声明を発した。

 さらに同月下旬、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、「武漢ウイルス研究所の研究員3人が(最初の感染例より前の)19年11月に体調を崩し、病院での治療を求めていた」という、流出説を裏付けるスクープ記事を出すと、その数日後、バイデン氏は研究所からの流出の可能性にふれつつ情報機関に追加調査を指示したと明らかにした。流出説も捨ててはいないと言わざるをえなくなったのだ。

 ちなみにこれも日本ではほとんど報じられていないが、こうした論調にきっかけを与えたのは、学者たちの「通説」に健全な疑問を持ったX(当時はツイッター)上のアマチュアグループだった。

「DRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字)」と自称する彼らの居住地はアメリカ国内だけでなく、インドで建築を生業とする者やカナダの起業家もいた。

 米中の公的記録や論文を様々なデータベースの底の底から掘り起こしてはSNS上で共有し、仮説も示した。例えば、武漢ウイルス研究所の研究者たちが、長年にわたって宿主とみられるコウモリが群生する洞窟で何種類ものコロナウイルスを収集してきたこと、2012年にSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た症状で3人の鉱山労働者が死亡する事故を起こした現場からも多くのウイルスが採取されていたことなど突き止めた。

 中国政府側の矛盾を的確に突くファクツを示したことで、アメリカの専門家たちやジャーナリズムを刺激したのである。

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