新横綱・豊昇龍と叔父の朝青龍「勝負強さはそっくり」、引退・照ノ富士の苦労は「指導者になった時に必ず役に立つ」【音羽山親方の初場所総括】

スポーツ

  • ブックマーク

 右四つからの下手投げを得意とするなど、現役時代は「玄人好み」の相撲で活躍した71代横綱・鶴竜。陸奥部屋からの独立後、新たに音羽山部屋を創設してから1年余り、力士は徐々に増えて、部屋も活気づいている。今回の初場所では、同部屋の霧島が敢闘賞を受賞した。NHK大相撲中継や「サンデースポーツ」の解説でもすっかりお馴染みになった音羽山親方に、初場所の土俵を改めて振り返ってもらった。【ノンフィクションライター/武田葉月】

優勝決定巴戦に沸いた国技館

――初場所は平幕・金峰山関が初日から9連勝するなど、優勝戦線を引っ張り、千秋楽まで混戦となりました。最終的に、大関・豊昇龍関、王鵬関、金峰山関の優勝決定巴戦に持ち込まれ、おおいに盛り上がりましたね!

音羽山親方:前頭14枚目の金峰山が後半戦では大関戦が組まれて、大の里、琴櫻を破った時は、「このまま優勝を決めてしまうのでは?」と思ったほど、勢いがありました。

 千秋楽は本割で2敗の金峰山と3敗の王鵬との取組が組まれて、結びの一番では豊昇龍が琴櫻を下し、巴戦が決定。国技館を埋め尽くしたファンの方たちが沸いていました。

「勝負強さ」という点では似ている

――巴戦では、豊昇龍関が大関の意地を見せて、2連勝して2度目の優勝。1月29日には、正式に横綱に推挙されて、「第73代横綱・豊昇龍」が誕生しました。親方は、現役時代に豊昇龍関の叔父さんにあたる横綱・朝青龍関とも対戦したわけですが、2人の共通点はどのようなところでしょうか?

音羽山親方:似ているところは、顔くらいじゃないかなぁ(笑)。豊昇龍自身は、最近叔父さんと接触していないようなコメントをしているようですけど、きっと何かしらのアドバイスはもらっていると思うんですよ。

 相撲に関して言えば、2人は取り口もタイプも違うけれど、「勝負強さ」という点では似ています。

「優勝なら、綱取り」と言われていたこの場所、後半戦を迎える前に3敗を喫して、一度は(優勝を)諦めたんじゃないかと思うんです。でも、他の力士が次第に星を落としてきたことで、チャンスが出てきて、あらためてやる気が出てきたのではないかと……。

今年はおおいに羽ばたいてほしい王鵬

――優勝決定巴戦に進んだ王鵬関の活躍も目覚ましかったと思います。

音羽山親方:前頭筆頭で12勝は大きいですね。これまで何度か三役昇進を狙えた場所もあったけれど、ことごとく逃してきて、本人も悔しかったと思います。そしてなにより、同期の豊昇龍がスピード出世して、三役、大関と番付を上げて、初場所は綱取りの場所でもあった。発奮しますよ。

 王鵬のいい点は、大きなケガがないというところ。あと、王鵬は押し相撲が得意というイメージがあり、技術も場所を追うごとに上がってきていて、それが勝ち星につながっていると思います。

 これは私の意見ですが、王鵬がこれから大関、横綱を目指そうとするなら、押しだけにこだわらず、四つ相撲も身につけたほうが、勝ちパターンが広がる。来場所は待望の三役昇進が確実視されていますが、今年はおおいに羽ばたいてほしい力士の1人です。

次ページ:自信が付いてきた金峰山

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。