「文春の訂正」にフジ社内は“大はしゃぎ”も…スポンサー“撤退”の動き加速か「新ドラマ出演時には連絡を」
過去に調査不足の指摘
このフジ関係者は「今度こそ徹底的に調べてほしい」という。過去には調査不足と指摘された問題があったからだ。
1999年に起きた「愛する二人別れる二人」出演者の自死。やらせ番組だった。2020年の「テラスハウス」出演者の自死。やらせが疑われた。「テラスハウス」の問題では第3者委員会を求める声があったが、つくられなかった。
「今度は調査不足などと言われぬよう、包み隠さず明かさなくてはならない」(フジ関係者)
会社の一大事ということで今年のフジのOB会(旧友会)は中止が決定された。会長は元副社長のY氏。在職中はフジの最高権力者である取締役相談役・日枝久氏(87)の側近だった。OB会であろうが、日枝氏と縁遠い人間は要職には就けない。
中止の理由は会社が受難期にあるからか、それとも日枝氏がピンチだからか。おそらく後者だろう。OB会に顔を出すのは日枝氏寄りの元社員が多い。日枝氏に反発していた元社員はOB会への入会すら拒否する。
日枝氏は40代の編成局長時代、折に触れ部下たちに「実るほど頭を垂れる稲穂かな、だぞ」と言っていた。早稲田大教育学部出身者らしい言葉だった。
だが、年齢を重ねて考え方が変わってしまったのかも知れない。今、フジに関わる誰に聞いても「ウチの諸問題を辿ると、すべて日枝氏に行きつく」と語る。
視聴率と売り上げの低迷や今回の問題のようなガバナンスの緩みである。視聴率はテレビ東京を除くと最下位、売上高もテレ東を除外すると最下位である。ボーナスも半分になった。「テレ東より安い」(フジ関係者)
元フジ解説委員の安倍浩行氏が再び語る。
「日枝氏の何が一番問題かというと、人事権を全て握っていること。人事権を掌中にするということは組織の全権を握るということなんです。これでは誰が社長か分からない」
フジの社長は日枝氏が2001年に退任したあと、このほど就任した清水賢治氏(64)で8人目だが、社長はずっと日枝氏が指名してきた。
局長級のポストもすべて日枝氏が決めていた。日枝氏の社長就任は1988年だから、実に36年にわたってフジの全権を握ってきたことになる。
「そうなると、ヒラメ社員ばかりになってしまう。みんな日枝氏の顔色ばかり見て仕事をするようになってしまった。チャレンジ精神もなくなってしまった」(安倍氏)
確かにフジは視聴率が低迷しているのみならず、流行も生めなくなっている。27日の会見に出席したフジ・メディア・ホールディングス(FMH)社長の金光修氏(70)は編成部員時代、「カノッサの屈辱」(1990年)や「料理の鉄人」(1993年)などを生んだが、そのノウハウが後進に受け継がれているとは言いがたい。
一方で日枝氏は自分と意見の合わぬ者は排除してきた。代表格は社内外の誰もが認める社長候補だった元編成局長のS氏である。社外に出されてしまった。
「CS波など地上波以外のメディアの積極的な展開を主張したS氏に、日枝氏は反対した。それが理由とされている」(フジ関係者)
日枝氏は地上波以外のCS、動画などの将来性に懐疑的だったと言われている。そのせいなのか、Huluを展開する日テレ、U-NEXTとタッグを組むTBSと比べ、フジの動画展開は遅れているように見える。
「動画の躍進などメディアの環境が動乱期にある今、90歳近くの人物が経営判断をするのは難しい」(フジ関係者)
大株主から「NO」も
それでも日枝氏は自分からは辞めないというのが関係者の一致した見方だ。
本人が望まない形での退任があるとすると、可能性は2つ。まず総務省の緩やかな行政指導である。
「政府が報道機関の人事に介入は出来ないから、勇退を推奨する形になるのではないか」(日テレ関係者)
村上誠一郎総務相(72)は既に「(フジの現状は)放送に対する国民の信頼を損ないかねない。早急に事実関係を明らかにし、視聴者やスポンサーの信頼回復に努めてほしい」と声明している。異例のことだ。やはり文春の訂正で勝ち名乗りを上げている場合ではない。
日枝氏の強みの1つは政界との太いパイプ。特に故安倍晋三氏とはゴルフをしたり、2人きりで食事をしたり、親密だった。
もっとも、安倍氏との関係は日枝氏にはプラスに働きそうにない。安倍氏と村上氏は犬猿の仲。2022年、村上氏は安倍氏を「国賊」と呼んだとして自民党の役職停止1年の処分を受けた。
これについて村上氏は「私は政治家として、論理的におかしいことはおかしいと言ってきた。ずっと正論を言い続けたつもりだ」と振り返っている。
日枝氏が本人の希望以外で退任するもう1つの可能性を挙げると、大株主からNOを突き付けられたとき。FMHの株のうち約7%を持つ米国ファンドのダルトン・インベストメンツは昨年の段階で日枝体制への不満を表している。
約3%持つ文化放送はフジサンケイグループの一員だが、ニッポン放送と違い、独立の気風が高い。一時、テレビ朝日に接近したこともある。
斎藤清人社長(60)は速やかな調査をフジに要求している。これまでなら考えられないことで、今後のキーパーソンになりそう。
約8%持つ東宝、約3%のNTTドコモの動きからも目が離せない。両社とも株の価値の毀損は社内事情的に許されないからだ。
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