内乱罪で起訴も「尹大統領」の支持率は50%まで上昇…野党の「極めて暴慢な行為」と身勝手な「動機」に気づき始めた韓国の有権者たち

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弾劾訴追案から勝手に削除された「内乱罪」

 つづいて注目すべきは、野党第一党「共に民主党」の極めて暴慢な行為だ。

 12月3日の戒厳令以来、共に民主党主導の巨大野党は尹大統領に続き、韓悳洙(ハン・ドクス)初代大統領代行を弾劾した。後者の場合、共に民主党の禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長が、恣意的に作り上げたルールに基づいて弾劾案を強行処理した。これにとどまらず、共に民主党は、要求が受け入れられない場合、崔相穆(チェ・サンモク)現大統領代行と国務委員全員を弾劾するとまで脅迫している。

 尹大統領就任以降、同党が国家公務員や検察官に対して提出した30件近くの弾劾訴追にさらに加えられたものである。当時、李在明代表を捜査中の複数の検察官も、弾劾対象となった。

 共に民主党はまた、ここ数週間、尹大統領が12月3日に内乱を首謀したと主張してきたが、内乱罪を立証するのが極めて困難であることに気づき、さらに尹大統領の憲法裁判所での審理を促進させるため、弾劾訴追案から「内乱罪」を勝手に削除した。弾劾訴追案で29回も繰り返していた内乱の用語を外すという矛盾した行動を取ったのだ。

 これは、12月14日に国会で通過した尹大統領に対する弾劾訴追案を無効にする行為とも言える。なぜなら、当時12人の与党側議員の賛成があって弾劾訴追案が通ったからだ。実際、その与党議員らは内乱罪の有無を問わなければ賛成していなかったと主張し、「詐欺弾劾」だと声明文を発表した。

 さらに、法の原則にも反する。公訴状、つまり弾劾訴追案は、その同一性を維持することが原則であり、もし訴追事実に大きな変化が生じた場合、憲法裁判所はこれを却下しなければならない。

すべては「李在明大統領」と自らの利益のために

 では、共に民主党はなぜここまで破滅的な行動を駆り立てているのか?

 保守政権を終焉に追い込むという明確な意図に加え、彼らは党代表である李在明が大統領の座に就くための障害を排除し、今の混乱期を自らの利益のために最大限に活用しようとしているのだ。

 李在明代表の左派ライバルである曹国(チョ・グク)と宋永吉(ソン・ヨンギル)の2人が最近投獄され、与党からも有力な大統領候補者が出てこない中、尹大統領が失脚すれば李代表の台頭はほぼ確実といえる。そのため、共に民主党は、すでに韓国社会と政治を麻痺させている緊張をさらに激化させ、計画を阻もうとするあらゆる試みを排除しようと必死になっている。

 その一環として、同党は今月初め、12・3戒厳令に関する「虚偽情報」を取り締まると言い、市民に通報を呼びかけるオンライン・プラットフォーム「民衆交番」を公開した。当然ながら「虚偽情報」の定義は完全に主観的であり、その基準は党の意図に大きく左右される。

 検閲に対する批判が高まるにもかかわらず、共に民主党の議員らは、「虚偽情報」を拡散して内乱を共謀した者への法的措置を強硬に主張している。ある野党議員は、韓国で最も利用されているメッセージングアプリ「カカオトーク」の監視を提案するなど極端なアイデアまで提示した。野党第一党はすでに10人の保守系YouTuberと複数の与党議員らを刑事告訴している。

国民の高まった怒りと危機感が反映された数値

 12月3日の戒厳令以降のこうした反対勢力の無謀とも言える行動は、法の枠組みを超えた混乱を引き起こしながらも、皮肉なことに尹政権支持者をこれまで以上に結束させる逆説的結果を招いている。

 尹大統領の支持率上昇について一部は、尹大統領の逮捕という前代未聞の出来事を目にして同情票が増える一時的現象だと評価しているが、これは本質を見逃している。

 より的確な分析は、韓国の有権者が反対勢力の暴走とその裏に潜む動機を見抜きはじめたからだ。つまり、戒厳事態を政治的道具として乱用し、国家運営と憲法秩序に深刻なダメージを与える行為に対し、国民の高まった怒りと危機感が反映された数値なのだ。

 韓国の有権者に問いたい。真の反乱者は一体だれなのか?

吉田賢司(よしだ・けんじ)
「JAPAN Forward」ソウル駐在記者、翻訳家。米ウィリアム・アンド・メアリー大学で政治学専攻。

デイリー新潮編集部

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