内乱罪で起訴も「尹大統領」の支持率は50%まで上昇…野党の「極めて暴慢な行為」と身勝手な「動機」に気づき始めた韓国の有権者たち

国際 韓国・北朝鮮

  • ブックマーク

公捜処の無理筋な論理を容認した裁判所

 しかし、現職大統領を取り巻く「世紀の事件」を巡り、他の捜査機関との縄張り争いで優位に立つため、公捜処は、大統領の職権乱用を調査する権利があり、内乱罪はその延長線上にあるという無理な論理を振りかざしたのだ。現職大統領は憲法上、刑事訴追免除権を有しており、そもそも内乱罪や外患誘致罪以外では刑事訴追を受けない。言い換えれば、公捜処は逮捕執行前に尹大統領を内乱罪で有罪と断定し、その推定有罪を根拠に、現職大統領に対する捜査管轄権を独断的に拡大したのだ。

 驚くべきことに、裁判所はこの無理筋な論理を容認した。刑事訴訟法第110条と第111条を公然と無視し、公捜処が事件の管轄を持つ理由について一切説明することなく、二人の裁判官が逮捕状を発行し、一人の裁判官が拘束令状を出したのだ。

 さらに、1月15日の第二次逮捕令状執行時、捜査当局による違法行為に関する報道がなされている。前述の刑事訴訟法によれば、大統領官邸は軍事機密の領域に属し、その立ち入りや捜索には責任者の同意が必要とされている。この場合、責任者は大統領警護庁長官である。だが、捜査当局は大統領官邸の警備団長に圧力をかけ、内部進入を許可させたと報じられている。立入許可書には必須とされる大統領警護庁長官の印鑑が欠けており、代わりに警備団の官印が押された無関係な紙切れが許可書に貼られていた。

法律専門家たちは「原点から違法」と指摘

 筆者がこれまでインタビューした韓国の法律専門家5人全員が、この事案は原点から違法であると指摘している。特に、韓国憲法学の第一人者とされる慶煕大学法科大学院の許営教授は、「手続き全体が最初から無効であり、これまで大きな実績を挙げられていない公捜処が、この注目度の高いケースを利用して、自らの存在感をアピールしようとしているように見える」と批判している。

 彼らは現在の状況を、「毒樹の果実」と表現した。証拠の出所やその証拠自体が汚染されていれば、その後に得られるすべての証拠も汚染されるという法的原則のことだ。

 ちなみに検察は2023年、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の偽証教師事件に対する拘束令状を請求し、国会が逮捕同意案を可決したにも関わらず、ソウル中央地裁は拘束令状を却下した。その理由は李在明の野党代表としての立場、そして今後の裁判での防衛権を保護するためだった。

 李氏は現在5件の刑事裁判に直面しており、そのうちの1件では有罪判決を受けたものの、一度も身柄を拘束されたことはない。尹大統領の状況と比べれば、とても平等とは言えない。

次ページ:弾劾訴追案から勝手に削除された「内乱罪」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。