政府のカネが底をつく…窮地に追い込まれた米財務省 トランプ政権の勢いを一気に失速させかねない「連邦債務の上限問題」
国際社会が実践する「トランプ対処法」
ドナルド・トランプ米大統領が掲げる「米国第一主義」に呼応する動きが、早くも国際社会で広がっている。予測不可能なトランプ氏の主張にひとまず耳を傾けることで正面対決を回避し、同氏の反応を見ながら臨機応変に対処するという戦術だ。
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その典型例が欧州だ。北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務局長は1月22日、「欧州が防衛予算を増加すれば、我々はさらに強くなる」とXに投稿し、NATO加盟国の防衛予算を国内総生産(GDP)比2%から5%に引き上げるべきとするトランプ氏の主張に歩調を合わせる姿勢を示した。
背景にあるのは、トランプ氏の欧州諸国に対する関税引き上げ発言だ。欧州側には、防衛予算の増額で関税引き上げを避けたい思惑が見え隠れする。
10%の追加関税の予告を受けた中国も、衝突よりも和解の握手を求めている。スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、中国の丁薛祥(ディン・シュエシアン)副首相は「均衡のとれた貿易を実現するため、競争力のある質の高い製品の輸入やサービスを増やしたい」と述べ、米国からの輸入を拡大する意向を示唆した。
懸念要因は連邦政府債務の増大
外交に加え、内政面でもトランプ政権は順風満帆のようだ。主要閣僚の連邦議会上院での承認が順調に進み、危惧されていたピート・ヘグセス氏も、24日には僅差ながら国防長官に承認された。
27日にはスコット・ベッセント氏が賛成多数で財務長官に承認された。筆者は、ベッセント氏の手腕がトランプ政権の成否の鍵を握るのではないかと考えている。「米国に黄金時代をもたらす」と豪語するトランプ氏にとって、経済政策全般を統括するベッセント氏の責任は大きいからだ。
世界最大規模を誇る米国経済は、昨年の成長率3%弱と好調であり、雇用市場も完全雇用状態だ。物価水準は依然として高いものの、足元のインフレ率は連邦準備理事会(FRB)の目標である2%近くにまで下がっている。
米国のリセッション(景気後退)を予測する専門家はほとんどいなくなったが、懸念要因は連邦政府債務の増大だ。昨年の連邦債務の対国内総生産(GDP)比は6%に上昇し、累積債務の規模もGDPを超えた。
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