BEGIN、故郷・沖縄への想いを込めた代表曲「島人ぬ宝」が令和でも支持される“納得の理由”とは “イカ天”を経てのデビュー当時も振り返る
「三線の花」の意外なヒットに本人らもビックリ、デビュー曲「恋しくて」の誕生秘話も
続いて、Spotify第2位は、’06年のシングル「三線の花」。こちらはリリース当時、妻夫木聡と長澤まさみのW主演が話題となった東宝映画『涙そうそう』の挿入歌に起用され、カラオケでもBEGINの中で2番手となっている。家族愛を感じさせるしんみりとしたバラードで、萩田光雄によるストリングスのアレンジが涙を誘う。
上地「この曲はもともと、沖縄を舞台にした三宅裕司さん演出の『ニライカナイ錬金王伝説』というお芝居用に書いた楽曲で、登場する2人の女性が歌っていたんです」
比嘉「『一五一会』という楽器を使った作品をたくさん出し(インタビュー第3回にて詳しく解説)、その後デビュー15周年のライブツアーもやって、次はどういったことをしようかと改めて考えていた時に、三宅さんに頼まれて作ったので、自分たちで歌うのを想定していなかったんです。それをセルフカバーしてみたら、こんなにたくさん聴かれたり歌われたりしているなんて不思議ですね。でも作品は、みんなに共感してもらえるよう、全体でひとつの物語になるよう心がけました」
ちなみに、島袋によると、「沖縄で三線が弾けるのは、僕らの世代だと3割くらいじゃないかな。でも、どの世代も一番弾ける曲は間違いなく『安里屋ユンタ』(沖縄民謡)でしょうね」とのこと。
そしてSpotify第3位は、’90年にリリースされた彼らのデビュー曲にして最大ヒット(累計約21.4万枚)となる「恋しくて」。BEGINは、当時バンドの登竜門となっていた通称“イカ天”(『三宅裕司のいかすバンド天国』/TBS系)への出場を機にデビューしたが、本作は「イカ天出身者には珍しく、ブルースバンドが出てきた!」と、デビュー前から評判になった。そもそも、なぜ、ブルースを歌うことになったのだろう。
島袋「僕たちが学生のころ、石垣島では民放が放送されていなかったんですね(※先島諸島では’93年に放送開始)。だから、上京した時にアニメやドラマの主題歌とか、同世代の話についていけなくて。その分、石垣島にいる時は学校の先輩にいろんなレコードを貸してもらって、ブルースにたどり着いたんです。その後、東京に出てからも、レンタルショップで石垣にはないレコードやCDを借りてきて、テープにダビングしていましたね。あと、地元には『コットンクラブ』という生演奏が聴けるお店があって、そこで練習している先輩たちをよく見に行っていたのもルーツになっています」
このシングルのカップリングでは、ブルースの名手でもあるエリック・クラプトンの「Wonderful Tonight」をカバー。こちらの楽曲も、優しい歌声と素朴な演奏に癒される。
「恋しくて」のほうは、なんと3月のリリースに先立って、日産自動車『プレセア』のCMソングとして元日から大量に放送され(しかも、3人が堂々と出演)、“イカ天効果”に拍車をかける形で、オリコン初登場4位に。これは当時、アイドル以外のデビュー曲としては異例の出足だった。
上地「デビューして間もない時に居酒屋で飲んでいたら、有線で流れていて、“ああ、なんかヒットしているのかな”って思いました。その後も、事務所やレコード会社の方が喜んでくれて、取材を受けたり番組に出たりするのが増えたことで、より実感しました」
比嘉「でも、ヒットするのがそんなにすごいこととも思っていなくて、“自分達はこれからどうなるのかな、小さな箱でも自分たちのライブができたらいいな”くらいにのほほんと考えていました」
BEGINの楽曲にまつわるエピソードを聞いていると、たとえ何らかの障壁があって時間がかかろうとも、信念を持って進めば道は開けていく、ということを信じたくなる。もちろん、周囲の人たちの協力もあってこそのヒットなのだろうが、いつ、どの時代のものが再ヒットするかわからないサブスク時代において、BEGINのような姿勢は、ますます重要になる気がした。
次回は、盟友である福山雅治との関係や、森山良子との共作で夏川りみが歌って大ヒットした「涙そうそう」について語ってもらおう。