65年間で「支配者」はたったの3人 フジ血塗られた歴史 87歳・日枝氏が権力にしがみつく理由

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日枝氏の政治力

 一方で日枝氏には政界との太いパイプという強みがある。確認できただけで昨年は3月23日、同9月23日の2回、岸田文雄前首相(67)と会談した。また安倍晋三元首相と生前はよく一緒にゴルフに興じていたことで知られる。

 もっとも、日本テレビ、テレビ朝日、TBSの社長は昨年、1度も首相と会っていない。メディアは権力の監視役でもあるから、政界と距離を置かなくてはならないからだろう。

 日枝氏は保守本流の首相たちとは近かった分、リベラルな村上誠一郎総務相(72)とは距離がある。村上氏が今回の件をどう見ているか注目されている。

 元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏(75)がX(旧ツイッター)でフジを辛辣に批判している。

「時の権力者と癒着し、番組を使って利権を求める体質のトップが去らない限り、明日はない。報道局の体をなしていない。放送免許の取り消しも視野に入る」(舛添氏のX、1月25日)

 大株主からの圧倒的な支持も日枝氏の力の源泉だったが、これも雲行きが怪しい。「室井慎次 敗れざる者」などの映画をフジがつくり、それを配給してきた東宝は24日、「株主として、このたびの問題について、事実関係の調査など適切な対応を行い、早期の信頼回復に努めるよう要望を伝えています」と声明した。

 前例のないことである。東宝は全フジHD株のうち、約7%持っている。

 フジHD株の3%強を持つ文化放送、やはり3%強の株を持つNTTドコモも忌憚のない意見を言い始めている。これまでなら考えられないこと。日枝氏へ支持が続くかどうか流動的と言える。

 フジHD株を7%以上保有する米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」からガバナンスについて厳しい意見を突き付けられているのは知られているとおりだ。

 テレビ朝日の「椿発言問題」(1993年)、TBS「オウムビデオ問題」(1989 年)は悪いイメージの払拭までに10年以上かかった。フジの問題も10年かかるのだろうか。そのとき、日枝氏が留任していたら、97歳である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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