「これからは代表とお呼びしてよろしゅうございますか」…会見不在「日枝氏」にフジ幹部がひざまずいた、8年前の“決定的瞬間”
1月27日、渦中のフジテレビで臨時取締役会が行われ、嘉納修治会長、港浩一社長の辞任が決まった。しかし、「フジテレビの天皇」と言われる日枝久・取締役相談役については、その地位は変わらぬまま。フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスの取締役相談役の役職を続け、そのままフジサンケイグループの代表としても君臨し続けることになった。
フジテレビの重要な決定事項に日枝相談役が関係していたのは周知の通り。23日に行われた社員総会でも、一連の不祥事の元凶として、日枝氏の辞任を求める声が相次いだ。社員の1人からはこんな発言も飛び出した。
「日枝さんなんて87歳の年寄りですよね。“これはもう利益が上げられないからやめよう”って言ったら“いや、それは日枝さんがやっているからまずいよ”ってキープしたり、“これどうですかね?”と言ったら“それは日枝さん嫌いだよ”って、そんな話ばっかりでした」
日枝氏が如何にフジテレビで「天皇」然として振舞ってきたかということについては、さまざまな報道が出ているが、「週刊新潮」が2017年に報じた以下の記事ほど、その“絶対君主”ぶりをまざまざと物語っているものはないだろう。
この年に発表された決算で、フジテレビは5期連続での減収減益に終わり、6月28日の株主総会では、その責任を取る形で、約29年間に亘りトップを務めた日枝氏が、代表権のない取締役相談役へと退いた。しかし、新体制が発足し、新任のトップが所信表明を述べた席で、今に至る「日枝崇拝」を象徴する、異様な場面があったのである――。
(「週刊新潮」2017年7月21日号記事の再配信です。文中の年齢、役職、年代表記等は当時のものです)
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2017年7月3日、東京・台場のフジテレビ本社22階ホールでは、社員1000人以上が集められての全体会議が開かれた。退任した亀山千広前社長(61)の後任、宮内正喜新社長(73)と、嘉納修治新会長(67)による所信表明が行われたのだ。
その模様は、社内に置かれたテレビで中継され、全社員が視聴した。
だが、壇上に立った嘉納会長の一言に、参加者らは耳を疑ったという。
「これからは、日枝取締役相談役を『代表』とお呼びすることにしたいと思いますが、代表、よろしゅうございますか」
ざわつく会場を他所(よそ)に、最前列の真ん中に座った日枝氏は、笑みを浮かべ頷く。
それを見た嘉納会長は、
「えー、皆さんもご異議ございませんかッ」
と会場に問い掛けるや、
「異議なし!」
の声と共に、最前列の幹部社員たちから小さな拍手の音がチラホラと――。
「ご異議のない方は拍手をお願い致します」
再び嘉納会長が押しの一手で叫ぶと、より大きな拍手の音が会場全体を包み込んだのであった。
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