子供が道草したら食事抜き…「兵糧攻めが効くのよ」 すぐにヒスる妻にうんざり、44歳夫が最近気になるアブナイお相手

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なぜ奈那さんは激しいのか?母の見解は…

 そんなとき奈那さんが体調を崩した。子どもたちがインフルエンザになり、とうとう奈那さんも引いてしまったのだ。ただ、すぐに医者にかからずにこじらせて肺炎を起こしてしまった。奈那さんは入院し、貞一さんは義母を呼んだ。

「義母はすぐ来てくれました。息子が学校に入ってからは、あまりうちに来てもらうこともなかったんですが。夕飯の支度をしてくれて子どもたちが寝るまでつきあってくれて。子どもたちも義母のことは好きなので、僕が帰宅すると3人でゲームをしていることもありました。楽しそうでしたね。子どもたちがキャッキャと声を上げている。それを見て、奈那がいると子どもたちはどこか萎縮しがちなんだなと改めて気づきました」

 貞一さんは、奈那さんの母親としての厳しさを義母に相談してみた。奈那さんはもともとああいう人なのかということも含めて聞くと、義母はしばらく考え込んだ。

「私はあの子に厳しくしたつもりはない。自分も子どもだったから、子どもとは同じ目線で話したし、教えてもらうことも多かった。だけどあの子は小さいときから、妙に責任感と正義感が強かったわね、と言っていました」

 奈那さんが小学校に入ったばかりのころ、遅刻してきたクラスメイトがいた。奈那さんは「遅刻しちゃいけないんだよ、帰れ」といち早く声を上げた。周りの子たちがそれにつられて帰れ帰れと叫び、その子は泣きながら帰ってしまったのだという。

「先生にその話を聞いて、どうしてそんなとびっくりしたと義母が言うんです。『私も夫も正義感のために人を批判するなんてことはほとんどないはずなのに。奈那はまじめでしたけど、正義のために人を傷つけてもいいと思っているところがあった』って。確かにそうだなと思いました」

 義母はため息をついていた。つられて貞一さんもため息をついた。僕は家族でのんびり楽しく生きていきたいだけなのに、と彼はつぶやいた。

「でも出世したんでしょ、奈那が言ってたわよって。『いや、出世とは違う』と異動になったことなどを話しました。義母はじっくり聞いてくれて『いいわね、仕事に夢中になれるってすごく素敵だと思う』と言った。そうだ、僕はこういう反応を奈那に求めていたんだと思った」

義母の過去

 その昔、子どもたちが小さいころ、うちのおとうさんが失業したのよと義母は言った。初めて聞く話だった。手っ取り早く稼ぐために義母は水商売の世界に入った。夫は仕事を探しながら子どもたちのめんどうをみた。そのうち、水商売がおもしろくなっちゃって、おとうさんが主夫やってくれてもいいと思い始めたと義母は笑いながら言った。

「ま、結局、自分の店を持てるわけでもないし、年齢とともにウケが悪くなるのも感じたからやめたけど。でも4年くらい勤めていたのよ、けっこう売れっ子ホステスだったんだからと義母は言いました。その話、奈那は知ってるのかと聞くと、奈那はもう小学生だったから覚えてるんじゃないかなって。でも僕は奈那の口からは聞いたことがない。それで思い当たったのは、奈那がサービス業の女性に冷たいこと。結婚前、デートで喫茶店とかバーとかへ行くと、サービスしてくれる女性をよく睨んでた。『あの子、あなたに媚びるような目で見てた』と言う。当時は嫉妬してくれているのかななんて思っていたけど、母親が酔ってどこかで男に媚びるところでも見たことがあるのかもしれません。とはいえ、潔癖すぎますけどね」

 義母にそれとなくそんな話をしてみると、「貞一さん、奈那を見捨てないであげてね」と手を重ねてきた。きれいにネイルが塗られた細長い爪と、その手のあたたかさに彼はドキッとしたという。

「義母に“女”を感じてしまい、そんな自分を恥じました。でもそれ以降、毎日、義母と話すのが楽しみになって。奈那は1週間ほどで退院したんですが、退院した日は義父母も交えてお祝いをしました。奈那は元気そうでしたが、義父母が帰って子どもたちが寝つくと『なんだかあなた、生き生きしてるわね』と。きみが退院してうれしいよと言ったら、『男の人がそういうときって怪しいのよね』って。どうして素直に言葉を受け取らないんだろうと思わずつぶやいてしまいました。それ以上、争いたくなかったから僕は風呂に入った。出てきて寝室に行くと、妻はもう背中を向けて寝ていた。なんだかかわいそうな女だなと思いましたね。同時に義母のきれいな手を思い出して、自分もちょっとおかしくなってると戒めました」

 もちろん、義母とどうにかなろうとは思っていない。ただ、1日仕事をして疲れて帰宅し、夕飯をとりながら四方山話をするなら、妻ではなく義母のほうが楽しい。貞一さんは自分の心の中に義母がくっきりと存在感を示しているのを感じている。愛に年齢は関係ない。彼の表情を見ていると、このままおわりそうにはないような気がした。

 ***

 今のところは問題のないように思える貞一さんだが、このまま奈那さんの“ヒス”が続くとなるとはたして……。夫婦のなれそめ、そして変貌していった奈那さんについては前編で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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