「巨大なクルドカーに追いかけられ、あおられた」 川口市で報告される数々の被害…市長は「日本文化を理解させるには長い時間がかかる」

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「まだ移民を受け入れる対策ができていない」

 2022年度の川口市に住む外国人の医療費の未収金は約7400万円。23年度は1億2900万円。1年で1.7倍以上に増えた(24年、川口市調査)。

 これらはクルド人だけの数字ではない。しかし、仮放免で在留資格がないクルド人は健康保険料も払っていない。当然医療費の自己負担分が高額になり、市の負担も大きくなっている。

 そんなもろもろの問題が解決する日は来るのか。

 日本はまだ移民を受け入れる体制ができていない。にもかかわらず、川口市では外国人の流入が止まらない。その矛盾の弊害が、地元住民や自治体の負担となって現われているのではないだろうか。

「市内の芝園団地には中国人がたくさん暮らしています。私が議員になった1990年代、彼らはゴミ捨てのルールをまったく守りませんでした。芝園団地を管理する住宅・都市整備公団(現UR都市機構)に指導の徹底を求めましたが、分別が守られるようになったのはごく最近です」

「クルド人に日本文化を理解させるには長い時間がかかる」

 文化の違いはなかなか埋められない。クルド人は彼らの住むトルコやシリアの山岳の生活をそのまま日本で行っているふしがある。

「遠い中東出身のクルド人に日本の文化やマナーを理解させるには、中国人よりももっと時間がかかるでしょう」

 共生を目指そうという意見は正論。しかし、共生に行きつくまでにかかる“時間”を許容できる長さは人それぞれ。今まさに不安や恐怖を感じている、迷惑している住民はそんなに長くは待てない。実際、隣がヤード(解体業者の資材置き場)になってしまった一人暮らしのお年寄りは、あきらめて引っ越した。

 川口で起床し川口で就寝してみると、外から見て想像していたのとは異なる風景があった。事情も分かった。そして、この街で一生分のケバブを食べた。

 前編【「在留資格のないクルド人は自国に帰るべき」 川口市長が語る クルド人問題を巡って「殺害予告も受けた」】では、この問題を巡って殺害予告まで受けた川口市長へのインタビューを行っている。

石神賢介(いしがみけんすけ)
ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。著書に『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)など。

週刊新潮 2025年1月23日号掲載

特別読物「現地ルポ 住んでみてわかった埼玉県川口市『クルド人問題』 殺害予告された市長の『本音』と『苦悩』」より

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