「在留資格のないクルド人は自国に帰るべき」 川口市長が語る クルド人問題を巡って「殺害予告も受けた」

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クルドカーの問題は

 ヤードが密集している赤芝新田では、クルドカーが猛スピードで走っている。この地域に筆者はいつも自転車で訪れたが、道が狭くトラックとのすれ違いは怖い。

 よく過積載が指摘されるが、荷の量よりも積み方に問題を感じた。資材をきつく結束していないトラックは金属や木材を道路に落とす。意外にもそんな状況を容認している住民が多い。

「道が割れて穴だらけです。できれば直してほしいものですけれどね」

 早朝つえを突き散歩していた高齢の男性は、クルド人への困惑は口にするものの、怒っているふうではなかった。しかし路面には大きなひびも入り、転倒してけがをする原因になりそうだ。

「クルド人に土地を貸している人たちは我慢できるのかも」

 地元の人がさほど気に留めていない理由を奥ノ木市長に聞いた。

「赤芝新田には約330人が住んでいますが、地主が多い。クルド人に土地を貸して収入を得ている人たちは、トラックの暴走も、ヤードからの騒音も、我慢できるのかもしれません。一方ほかの住人のなかには、不満を持つ人もいます。昭和の頃に川口市全域で行われた区域区分の際、当時の赤芝新田周辺は原則として、住宅や商業施設などの建築を不許可とする市街化調整区域になった経緯がある。農地にするしかないけれど、川口で農業を始めても採算は合いにくい。生産量も価格も他県産の野菜に勝つのは大変です」

 そんな用途が限定された土地に注目したのがクルド人たちだった。

「地主も活用しきれない土地は貸すしかなかった。皆さん、川口市を外から見て、さまざまな意見をお持ちだと思います。でも、市内にはいろいろな事情があるのです」(同)

 後編【「巨大なクルドカーに追いかけられ、あおられた」 川口市で報告される数々の被害…市長は「日本文化を理解させるには長い時間がかかる」】では、川口市で取材を行うジャーナリストの「恐怖体験」などを報じている。

石神賢介(いしがみけんすけ)
ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。著書に『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)など。

週刊新潮 2025年1月23日号掲載

特別読物「現地ルポ 住んでみてわかった埼玉県川口市『クルド人問題』 殺害予告された市長の『本音』と『苦悩』」より

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