フジ日枝氏は自ら退任することはない…90歳近い2人が組織を動かすフジテレビの「HOライン」

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日枝相談役の進退

「フジ社員の誰に聞いても『日枝氏は退いたほうがいい』と言うはずだが、一方で誰に聞いても『辞めない』と答えるだろう。取締役相談役である日枝氏の人事権を握るフジとフジMHとの首脳陣が、いずれも日枝氏に指名された面々だからです」(フジ関係者)

 1月23日行われた遠藤龍之介・フジ副会長、日本民間放送連盟会長(68)の会見を眺めていたフジ関係者は苦笑したという。

 遠藤氏は取材陣に対し「全てのことを日枝が決めていると言われるんですけど、実はそんなことは本当にないんですよ」と語った。

「昔から話術に長けた遠藤氏らしいレトリックだった。些末な案件まで全て日枝氏が決めているなんてあり得ない。ただし社長人事や幹部人事など肝心なことは決めているということです」(フジ関係者)

 ちなみに遠藤氏は1981年入社。

 23日のフジMHの緊急取締役会を終えたあと、囲み会見に応じた同社・金光修社長(70)の言動にもフジ関係者は苦笑いしたという。金光氏は記者から「日枝氏は出席しましたか?」と問われると、しばし考えたのち、「出ていました」と答えた。

「フジMHの取締役は監査役を入れても17人に過ぎない。議長役の金光氏が日枝氏の出欠を即答できないはずがない。日枝氏に火の粉がおよぶのを防ごうとした表れ」(フジ関係者)

 金光社長は西武百貨店を経て1983年に入社した。遠藤氏との共通点はどちらも若手時代にエリート部署である編成部を経験したこと。件の編成部長の先輩なのである。

 フジの現執行部に指示を与えているのは日枝氏ばかりではない。日枝氏の腹心で、剛腕で知られる尾上規喜・フジMH常勤監査役(89)もそう。尾上氏はフジMHとフジの隅々まで知り尽くしている。

「遠藤氏も金光氏も尾上氏には全く頭が上がらない。ネット時代、動画時代でありながら、フジは90歳近い2人が組織を動かしている。2人はそれぞれの頭文字を取り、HOラインなどと呼ばれている」(フジ関係者)

 フジ関係者によると、港社長、大多氏らによる組織的な隠蔽が明るみに出ないかぎり、フジ側は港社長ら数人の取締役の引責辞任で済ませるつもりだという。

 ただし、港社長や大多氏が隠蔽を行っていたとなると、状況はガラリと一変する。重大な企業倫理違反だから、組織一新が迫られ、日枝氏の退任は避けられなくなるだろう。

 CMが数年単位で戻らない可能性もある。そう読む声も他局に複数あり、「そのときは不動産業になるしかないのでは」と冷めた声が上がっている。盟主気取りによってフジは他局に嫌われている。

 フジが消えたら約1400人の社員は困るだろうから、フジMHによる手厚い補償が求められるだろう。一方でスポンサーはテレビに執着していない。昨年の地上波全体の広告費が1兆6095億円なのに対し、ネット広告は3兆3330億円(電通「2023年 日本の広告費」)。テレビが花形産業だった時代はとうに終わっているのである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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