フジ日枝氏は自ら退任することはない…90歳近い2人が組織を動かすフジテレビの「HOライン」

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港社長の異様な接待

 フジテレビによる中居正広氏(52)への異様な接待の発端は、港浩一社長(72)にあったことがフジと他局の関係者の証言によって分かった。港社長は現場制作者時代、とんねるずに対し、常識外れとしか言いようがない接待を行っていた。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 港社長は自分が演出した「とんねるずのみなさんのおかげです」が放送中だった1988年から97年、とんねるずに対し、局内外の人間が目を剥く異様な接待を行っていた。

「とんねるずやその関係者らを大挙引き連れてハワイへ。費用は全部、ウチが持った。毎回、巨額の社費を使っていたから、『スポンサーの金を何だと思っているんだ』との声が上がっていた」(フジ関係者)

 それだけではない。連夜のようにとんねるずらと東京・六本木の高級飲食店に繰り出し、どんちゃん騒ぎを繰り広げ、湯水のように金を使っていた。「他局にそんな悪習はなかった」(TBSのベテランプロデューサー)という。

 日本テレビ関係者も振り返る。

「どの局もタレントには既定の正当なギャラを支払っている。それなのに度を超した過剰な接待をする港社長の姿勢が理解できなかった。タレントに誤解を与えるから、民放界全体に迷惑だった。タレントを捕まえたかったのかも知れないが、それは企画力や制作力でやるべきこと」

 当事者だったフジ関係者も渋面で語る。

「港氏の番組を統括していた当時の第2制作部長も接待が行き過ぎと考えていたようだが、それでも港氏らが前例をつくってしまったから、誰も止められなくなってしまった」(フジ関係者)

 もっとも、今のフジには大盤振る舞いをする金がない。2011年以降、視聴率のトップ争いに絡めないから、CM売上高が低迷している。今年度上期(4~9月)の個人視聴率も3部門(全日帯、ゴールデン帯、プライム帯)とも4位。テレビ東京を除くと最下位である。

「渦中の編成部長は金がないにもかかわらず、港社長の過剰接待の精神を受け継いでしまったと見る。中居正広氏の歓心を買おうと、女性をあてがったのではないか。中居氏は視聴率が獲れる男ではないが、元SMAPのネームバリューがあるから、CMは売れる」(TBSのベテランプロデューサー)

 このTBSベテランプロデューサーは編成部も経験している。局のキーパーソンで超多忙なフジの編成部長が、タレントと遊び歩いていたこと自体、信じられないという。

「フジはこの問題を民放の全体論にすり替えようとしているようフシがあるが、大盤振る舞いも女性をあてがうのもフジ独特のこと。他局ではあり得ない話」(TBSベテランプロデューサー)

組織的隠蔽はあったのか

 残された大きなテーマはいくつかあるが、その1つは2023年6月のトラブル発生時、編成担当専務だった大多亮氏(現関西テレビ社長)と港社長に隠蔽の動きがあったかどうかということ。

「第3者委員会の調査やマスコミの取材で隠蔽が明らかになったら、フジは会社を揺るがす壊滅的打撃を受ける」(TBSベテランプロデューサー)

 現在のフジは港社長から番組出演者まで、この件に関する情報を伏せており、その理由を「被害女性の人権を守るため」と説明するが、TBSベテランプロデューサーはあきれている。

「中居氏と編成部長の親密度や、トラブル後の港社長から編成部長への指示などは明かせる。それをしないのは自分たちを護るためで、女性を楯にしているとしか思えない。また、昨年12月27日には編成部長の関与を会社として否定したが、その真偽も曖昧になっている。トラブル発生時にはコンプライアンス推進室にも事実を伏せていたというから、もはや組織として機能していないのではないか」

 一方、フジの業績はずっと低迷している。2023年には当時の宮内正喜会長(80)が、報道陣をシャットアウトした社内全体会議で「深刻で緊急事態とも言える状況」と発言。ボーナスも半分になった。

 ところが他局や視聴者に対してはいまだ民放の盟主を気取る。ここにも問題があると指摘する声は多い。弱みを見せたがらないから、問題やトラブルの根本的解決が図られにくいという考え方である。

「フジテレビは過去の栄光が大きすぎたのです」(元フジ社員でドキュメンタリー映画監督の大島新氏のnote)

「週刊フジテレビ批評」(土曜午前5時30分)という番組がある。どこの局にもある自己批判番組だが、フジは他局の番組まで批評するのが特色である。他局にはこれに強い不快感を漏らす声が以前からあるが、これも盟主気取りの表れだろう。

 25日放送の同番組では中居氏とフジの問題を取り上げたものの、30分番組のうち僅か約5分。他局の自己批判番組では考えにくい。自分のところの不祥事と向き合えず、なんのための自己批判番組なのか。

 しばらくはフジへの批判は止みそうにないが、フジ関係者は「それでも今のウチが潰れることは100%ない」と断言する。

 フジはこのままCMが止まり続けると、9月末までに500億円程度の巨額損失を出すと見られるものの、持ち堪えられるという。親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(フジMH)の資金力が強力だからである。

「もともとフジの売上高はフジMHの総売上高のうち、2、3割程度に過ぎない。一方で都心のオフィス不足などによって、やはりフジMHの子会社で不動産会社のサンケイビルなどが利益を上げている」(フジ関係者)

 銀行から緊急融資などを受けなくてもやっていけるそうだ。ただし、安泰ゆえ、もう40年近くフジのトップの座を占め、組織を硬直化させているとされる日枝久取締役相談役(87)が自ら退任することもないという。

 前出・大島氏は「日枝さんには、一刻も早く勇退することをお勧めします」と言うが、現実には難しい。

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