今の「フジテレビ」に必要なもの 「ワイドナショー」後番組を託された“八股”芸人のポテンシャル

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珍回答「野生の勘」

 そんな狩野の一世一代の大仕事と言えるのが、あの伝説の謝罪会見である。未成年女性との淫行疑惑を報じられた狩野は、報道陣に囲まれて釈明と謝罪を行った。相手の実年齢に気付いたきっかけを「野生の勘」と語るなど、彼らしい珍回答・珍発言を連発し、日本中を爆笑の渦に巻き込んだ。

 自分が見えていない人間の自然なリアクションは、ときに人間が計算できる範囲を超える笑いを生み出すことがある。こういう人がゲーム実況に向いているのは当然だろう。ゲーム実況は、目の前で起こっている状況にその都度、反応していくことで成り立っている。狩野はただ必死にゲームをするだけ。自然な反応から魔法のように笑いが生まれ、ついでに奇跡的なトラブルまで次々に招き寄せていく。

 Netflixのバラエティコンテンツ「トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~」でも、狩野はその持ち味をいかんなく発揮していた。過去に経験した「奇跡」の数が尋常ではないため、それをありのままに話すだけで自然と笑いが起こっていた。

 スキだらけの構えで自信満々に芸能界を渡り歩く狩野のことを、誰もが温かく見守りたくなってしまう。危機を迎えているフジテレビにいま必要なのは、こういう人間の底抜けの明るさなのかもしれない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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