石破首相が立民・野田代表をべた褒めの理由 選挙制度改革にも言及

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「そのために入閣するのは違う」

 その首相が傾倒し、たびたび演説で引用するのが、第55代首相の石橋湛山である。

「湛山と同じ中道の政治家を自任する石破さんは、現行の小選挙区制でしばしば見られるポピュリズムに支えられた当選には否定的。新制度を導入することで、自身のような中道政治家が多数当選すると考えているのです」(前出の関係者)

 23年6月に発足した超党派の議連「石橋湛山研究会」には中谷元防衛相も名を連ね、共同代表を務める岩屋毅外相もまた「中選挙区連記制」の導入を主張している。同会の事務局長である小山展弘衆院議員(立憲)に聞くと、

「勉強会は、国会開会中は基本的に月1回開かれます。総理になる前は石破さんも熱心に出席していました。政治学者の中島岳志さんが講師を務めた時、石破さんは『小選挙区制が機能していないのは制度が悪いのか、使いこなせないわれわれが未熟なのかどちらでしょうか』と質問していました。かつて二大政党制を目指して小選挙区制を支持したご本人は、現状がうまくいっていないと見ているのでしょう」

 一方で、こう言うのだ。

「選挙制度は一本の法律であり、それを変えることが大連立の理由にはならないと思います。協力して新たな制度を考えることはあるにせよ、そのために入閣するというのは違うのではないでしょうか」

野田代表をべた褒め

 6日には、立憲民主党の野田佳彦代表が大連立の可能性をあらためて否定。それでも、国際関係学研究所所長の天川由記子氏が明かすには、

「東南アジアから帰国した日に、石破さんと話す機会がありました。ご本人は『大連立のダの字も言っていません』と否定していましたが、野田さんについては『もう20年の付き合いで、いろいろと話すようになったのは彼が総理だった時。私は予算委員会の筆頭理事で、その時から安全保障の考え方などで共通する部分が多く、政治家としても人としても信頼できる』と、べた褒めでした。『野田さんは強敵だけれど、尊敬できる人が相手だとやりがいがあります』とも言っていましたね」

 選挙制度についても、

「小選挙区比例代表並立制が1994年に導入される際、石破さんは推進派でしたが、現在は『本当にこれでいいのかという思いはあります。有権者の方からすれば“自民はいいけれどこの候補は嫌だ”ということもあるでしょう。中選挙区であれば、同じ党でABCと選べるので、ユーザーフレンドリーではあると思います』と話していました」

“同士討ち”の要素は残る

 延命策を巡らすのは為政者の常だが、言うは易く行うは難し。選挙制度に詳しい日本大学名誉教授の岩井奉信(ともあき)氏は、

「『連記制』であっても、同じ党の候補者同士が競い合うという、94年以前の中選挙区制のデメリットである“同士討ち”の要素は残ってしまいます。他方、組み合わせの可能性がいくつも生じるので、石破さんが望んでいるであろう政界再編はしやすくなるでしょう」

 としながらも、

「選挙制度は、一朝一夕では変えられません。前回も第三者機関で議論し、数年が費やされました。またそもそも、有権者と政界とで意思は必ずしも一致するものではありません」

 国民が権利を行使する機会を、大連立の道具にされては堪らないのだ。

週刊新潮 2025年1月23日号掲載

特集「参院選で敗れても辞めたくない 石破茂首相が企む『大連立』の仕掛け方」より

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