「温かった」の発音に「オーマイガー!」の大合唱 日本で働く「外国人労働者」が直面する意外な「言葉と文化の壁」

  • ブックマーク

5000語もある「オノマトペ」

「大盛り」「大森」しかり、日本には異様なほど「同音異義語」や「同訓異字」が多い。日本語には原則50音しかなく、限られた音の中で世にあるあらゆるものを表現しなければならないからだ。

 例えば「こうせい」の場合、「構成」「公正」「校正」、イントネーション違いも含めれば「後世」などでまである。

 同訓異字(同じ訓読みで字が違う言葉)では、例えば「かける」の場合、メガネや、ソース、電話、音楽、カネ、橋までにも使われるため、外国人のなかには「動詞が出て来なくてこまったら『かける』を言っておけばまぐれでもあたる」と皮肉る人もいる。

 また、皿1枚、人ひとり、豆腐一丁など、数詞が外国人をパニックにすることは有名だが、実はそれ以上に絶望させるものがある。「オノマトペ」だ。

 繊細な日本語には、このオノマトペが多い。

 雨の降り方ひとつ取っても「ざーざー」「しとしと」「ぱらぱら」「ぽつぽつ」など枚挙にいとまがない。

 しかしそれを軽く凌駕するのが「食べ物の食感」だ。

「『サクサク』『ぷりぷり』『ほろほろ』『シャキシャキ』『とろとろ』『ポリポリ』『ネバネバ』『かりかり』。料理長から言われた食感はようやく覚えましたが、勉強のために読んでいた漫画に『はふはふ』が出てきて頭がおかしくなりそうでした 」(中上級学生)

他国の外国人が話す日本語のアクセント

 技能実習生などの外国人労働者の場合、自国である程度日本語を勉強して来日することが多いのだが、彼らには1つ苦労する点がある。

「他国の外国人が話す日本語のアクセント」だ。

 日本にある語学学校に通っている留学生の場合、他国の学生が話す日本語のアクセントやよく間違う傾向に慣れているのだが、自国の語学学校に通ってきた外国人は、それらに慣れていない。

 例えば中国人の場合、「あそこで食べるの人」と、「の」を付けるクセがあったり、促音(小さい「っ」)の発音が苦手だったりする傾向があるのだが、ベトナムでベトナム人だけのクラスで日本語を学んできた人は、中国人の話す日本語に慣れるのに時間がかかるのだ。

 もう1つ、自国で日本語を学んでくる技能実習生などは、日本の「方言」に慣れておらず、実際働く現場に強い方言があった場合、こちらも慣れるのに時間がかかるケースがある。

「東北地方で農業に携わっていますが、最初高齢の方が何を言っているのか全く分かりませんでした。1年経った今では大分慣れましたが」

「東京のある観光地で働いています。お客さまが地方から来ている人も多いので、いつもと発音や単語が違う人がいらっしゃったら日本人の先輩を呼びます」

次ページ:コロナ禍の外国人労働者たち

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。