「温かった」の発音に「オーマイガー!」の大合唱 日本で働く「外国人労働者」が直面する意外な「言葉と文化の壁」
現在、日本の職場には多くの外国人労働者が日本人とともに働いている。
出入国在留管理庁によると令和5年 10 月末現在、その数は 204万8675 人。外国人を雇用する事業所数は 31万8775か所で、前年同時期と比べ22万5950人、1万9985か所の増加となっている。
大手企業はもとより、昨今ではコンビニや飲食店、日本の古い旅館においても外国人労働者の姿をよく目にするようになった。そこで今回は、筆者の元日本語教師の経験から、外国人労働者が現場で直面する「言葉や文化の壁」を紹介していきたい。
【写真】外国人労働者はどんな「現場」で働いているのか。現場から上がる苦労の声
日本人が気付かない日本語の難しさ
外国人労働者が働く産業の割合を見てみると、製造や建設といったブルーカラーの現場だけでなく、「宿泊・飲料サービス業」や「医療・福祉」など、人とのコミュニケーションが求められる現場が多いことが分かる。
ここで外国人労働者にとって、仕事におけるスキル以上に重要になってくるのが「言語」だ。
日本語は世界の中でも非常に難しい言語だとされている。その理由としてよく挙げられるのが「ひらがな」「かたかな」「漢字」という多様な文字の存在なのだが、実は日本語が外国人にとって難しいと感じられるのは文字だけではない。
真っ先に外国人を翻弄するのが「発音」だ。
筆者が日本語教師をしていた時、「形容詞」を教えていた初級クラスで全学生が毎度狼狽する単語があった。
「温かい」だ。
原形の「あたたかい」は大概難なく発音できる。が、これを過去形にした途端、教室中に「オーマイガー」や「アイゴー」、「マンマミーヤ」といった各国の感嘆語が飛び交うことになる。
「あたたかかった」
日本語は外国人からすると、よく「弾丸を飛ばしたような音に聞こえる」とされる。ほぼすべての言葉に母音があるので、歯切れよく聞こえるのだ。
それでもなんとか「あたたかかった」をクリアした学生たちに、「あたたかくなかった」というラスボスの存在を告げようものなら、教室のいたるところで「鉄砲の暴発」が始まるのだ。
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