真田広之の“常人離れした”英語トレーニング術とは 「文法は少々怪しいが、奇麗な発音」

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信号待ちでも

 このとき不惑間近。当時の心境を、後に真田は〈いきなり本場の舞台に立って、原語でシェイクスピアのせりふを言うとなったとき、まさに後悔の絶頂でした。やっときゃよかった、って〉と回想している。

 アクセント、言い回し、リズム、演出と、それぞれ専門のコーチについて英語を猛特訓。また、レストランでも信号待ちでも、ひたすら暗記したセリフを言い続ける習慣がついたという。

 かように常人離れしたトレーニングで身に付けた英語力だが、専門家にはどう聞こえるのだろうか。

「日本語だったらすっと言えそうなことでも言葉につまったり、文法が少々怪しかったりするという点で、ネイティブレベルとはいえません」

 とは、「tori studio」英語演技クラスで指導する、バイリンガルの映画監督・渋谷悠氏。例えば、受賞後のあるインタビューでは、

「“人生は一度きり”と言いたいときに“Life is only one.”という表現をされています。意味は通じますが、“You live only once.”などと言う方が自然です」

「奇麗な発音」

 こう指摘した上で、

「日本語にないLとRを使い分けていますし、thもちゃんと舌の先を上前歯に当てて発音できています。これらの音は日本人が特に苦手とするもの。また、次の表現を探しているときの“Umm”が、しっかりと英語を話す人の言い方になっています。ひたすらセリフを暗記したということですが、それが奇麗な発音につながっているのでしょう」

 そう特訓の効果を評する。先のデーブ氏は、

「たしかに日本人なりのアクセントはありますが、丁寧な英語で、聞き取りやすい。100%の英語だと、かえって日系アメリカ人と変わらなくなってしまいますから、日本人ならこれぐらいでいいですよ。とにかく、アメリカで挑戦する日本人には、“めざせ真田広之”と言いたいですね」

 世界のサナダ、次はどんな賭けを見せてくれるのか。

週刊新潮 2025年1月23日号掲載

ワイド特集「狂った世界」より

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