超リアル再現の「九龍城砦」アクション映画が遂に日本上陸 ソイ・チェン監督が元住人への聞き取りで知った「伝説のスラム街」の意外な実態

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 昨年4月に香港で公開され、瞬く間に大ヒットを記録した「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(原題:九龍城寨之圍城)」が、日本でも話題を呼んでいる。アクション監督の谷垣健治氏による激烈アクション、九龍城砦を再現したリアルなセットなど、見所が多すぎる作品だが、アクションファンのみならず老若男女の心をとらえたことで空前のヒットとなった。その根本には、九龍城砦に入った経験のないソイ・チェン監督が、事前のリサーチで知った“ある意外な実態”があったようだ。

(全2回の第1回)

 ***

公開までは正直とても心配していた

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」は久々の香港アクション大作だが、その舞台が伝説のスラム街・九龍城砦という点も見逃せない。驚くほどリアルに再現された九龍城砦のセットは香港に「九龍城砦ブーム」を呼び、昨年10月には香港国際空港内に展示された再現セットも好評を博した(現在は4月13日まで啓徳 AIRSIDEで展示中)。

 マンガやゲームなどの影響もあり、九龍城砦の人気がもともと高い日本からすると、意外なブームではないだろう。だが、九龍城砦の“悪評”をよく知る地元・香港が「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」をどう受け止めるかは、実のところ未知数だった。本作のアクション監督を務めた谷垣健治氏は、監督のソイ・チェン氏と公開の1カ月前に「当たるのだろうか」という不安を語り合ったと明かしている。

 今回、インタビューに応じたチェン監督もまたこう語る。

「その当時は、私も谷垣さんと同じような気持ちでした。九龍城砦が取り壊されてから長い時間が経っていますから、今その場所をテーマにした映画を撮って、観客が興味をもって観ていただけるのかなと心配していたんです。

 また近年、香港映画界ではアクション映画があまり作られていません。『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のようなアクション映画を、今の香港の観客が受け入れてくれるのだろうか、本当に映画館まで観に来てくれるのかと、正直とても心配していました。もちろん、新しい要素を加えたり、若手俳優を起用したりと、私たちも様々な努力と工夫を加えましたが、やはり(公開されなければ)わからないですよね」

リサーチで浮かび上がった「意外な九龍城砦」

 チェン監督は現在52歳。マカオで生まれ、11歳で香港に移った。通っていた小学校は九龍城砦の近くだったが、九龍城砦の中には入っていない。そこで「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の準備は、まず内部についての丹念なリサーチから始まった。

「とにかく怖い、危ない場所だと聞いていました。でも、このプロジェクトを引き受けたからには、理解を深める必要があります。幸いにも書籍やネットで様々な資料と写真を見ることができましたが、それだけではとても足りないので、暮らしたことがある人や、住人ではないけれど事情に詳しい人に話を聞いて、質問をしました。暮らしぶりや、黒社会(香港の裏社会)の中での九龍城塞といった内容です」

 映画で描かれた80年代の香港を知るチェン監督にとって、リサーチで想像を膨らませることは比較的容易だった。ただし、浮かび上がった九龍城砦の姿は、外部の人間が考えていたそれとは少し違っていた。

「皆さんが考える九龍城砦は、警察も容易に手を出せない無法地帯で、中はめちゃくちゃというものですよね。実はリサーチを通して気がついたことが1つありました。住人たちの間には、生活そのものや暮らし方、あるいは何かをするにしても、しきたりやルール、人間関係ができていたんです。この部分は映画の中でしっかり描くべきだと思いました」

次ページ:映画界のバトンタッチもモチベーションの1つ

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。