ファンが激怒する「上沢移籍問題」と「不透明な人的保障」 日本球界の“変なルール”は早急に見直すべきだ

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新庄監督がルール設置を提言

 1月20日に行われた12球団の監督会議では、日本ハムの新庄剛志監督が、ポスティングシステムを利用してメジャーに移籍した場合は、最低でも古巣の球団で1年プレーすることを義務付けるようなルールを設けることを訴えた。

 ちなみに、韓国のプロ野球「KBO」ではポスティングシステムを利用してメジャーに移籍した選手が韓国球界に復帰する場合、古巣の球団としか契約できず、復帰後4年間は、その球団が選手の保有権を持つルールがある。どのような形に改めるか、日本球界で議論が必要だが、現行のままで良いと考えている球界関係者やファンは少ないだろう。

 これ以外にも見直すべきルールは存在している。FA移籍に伴う人的補償の運用だ。2023年オフ、西武からソフトバンクにFAで移籍した山川穂高の人的補償について、西武が和田毅を指名すると大々的に報じられながら、和田ではなく、甲斐野央が移籍して大きな騒動となった。

 詳細は公にはならなかったが、大ベテランで功労者でもある和田の指名をソフトバンクが拒否。当初、プロテクトされていた甲斐野を譲渡することで話をまとめたと言われている。

 FAの人的補償については、28人をプロテクトしてそれ以外の選手のリストを提出し、その中から獲得する選手を選ぶルールがある。しかしながら、実際のルールの運用はそこまで厳正なものではなかったという。

「不透明な人的保障」がファンの野球離れに繋がる恐れも

 過去、FAでの移籍時に編成に関わっていた担当者は、以下のように話す。

「私はFAで選手を獲得して、人的補償のプロテクトを考える側でした。ただ、実際は何もない状態からリスト作るわけではなく、相手球団から要望する選手を事前に聞いており、いわゆる“下交渉”をしていました。これは相手側と関係性があったからできたことで、球団によって異なります。ただ、確実に言えることは、そこまで厳格な運用がされているというわけではない。当初、プロテクトしていた選手が変わることも当然あると思いますね」

 プロテクト対象の28人を除いたリストについては、当該球団が直接やり取りしており、NPBが、それをチェックしているようなことはないという。そのため、「和田から甲斐野に代わった」と指摘されているように、“後出しじゃんけん”が可能となっているのだ。

 過去にも、FAの人的補償で似たような騒動があった。2017年オフ、大野奨太が日本ハムから中日に移籍した際にも、日本ハムが人的補償で、大ベテランの岩瀬仁紀を指名したものの、最終的には金銭補償で落ち着いたと言われている。

「上沢移籍問題」と「不透明な人的保障」。いずれも一度、問題が浮上したにもかかわらず、同様の事例が起こっている。多くの野球ファンが疑問を感じているルールや運用をそのまま放置することは健全ではない。ファンの野球離れにつながる危険性を帯びていると言っても過言ではない。NPBは、早急にルールや運用の見直しを進めていく必要があるのではないか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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