アスレチックスに電撃入団した“二刀流” 森井翔太郎を日本スカウトはどう見ていたか…逸材の“米球界流出”は今後も続く?

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日本ハムが大谷に日本球界入りを説得した「根拠」

「以前と比べて日本の高校生や大学生でも将来的にはメジャーに行きたいということを考える選手が増えたことは確かです。日本人選手が多く活躍していることはもちろんですし、YouTubeなどでメジャー選手の映像が簡単に見られるようになり、昔のような距離を感じなくなったことは大きいと思います。また今回、森井が好条件で契約したことも、インパクトが大きいですよね。佐々木麟太郎、森井というドラ1候補の高校生が2年続けて米国に行く決断をしたわけですから、今後も同じように考える選手が出てくるのは、自然な流れだと思います」(セ・リーグ球団スカウト)

 日本だけでなく、韓国や台湾の有望アマチュア選手についてもメジャー球団は早くから調査しているケースも多く、アジア圏の選手も有力なターゲットになっていることは間違いないだろう。しかし一方で、森井のような選手が一気に増えるかということについては否定的な意見があることも確かだ。

「正直、森井のような例は特殊なケースだと思いますね。(森井は)中高一貫の進学校に通っており、いわゆる強豪校の選手と比べると視野が広い。将来に対する考え方もしっかりしていて、早い段階から最終的にはメジャーということを話していたようです。佐々木麟太郎にしても、メジャーで活躍している菊池雄星や大谷翔平を指導した花巻東の佐々木洋監督の長男ですから、より米国を身近に感じたのではないでしょうか。日本では、甲子園に出て日本のプロ野球を目指すことが現実的な目標としてスタンダードであり、米国での生活まで考えて早くから準備するような選手は少ないです。よくドミニカやプエルトリコなどの例を出す人はいますけど、すぐに日本がそんな状態になることはないと思います」

 過去の例を見ても日本のアマチュアからマイナー契約を結んで渡米した選手は多いが、メジャーで活躍するまでになった例は非常に少ない。高校からメジャー希望だった大谷を日本ハムがドラフトで指名した時に説得した資料でも、日本人選手がメジャーで成功するにはNPBで活躍してから渡米する方が、成功する確率が高いことが示されている。大谷もそのルートで成功した。

 ただ、誰しもが同じようなルートを歩む必要はなく、選手にとってはあらゆる選択肢が増えたということは喜ばしいことではないだろうか。スカウトのコメントにもあったように、森井は早くから米国行きを意識してトレーニングや英語の勉強に取り組んでおり、高い目標が成長の原動力となった部分もあったはずだ。後に続く選手のためにも、森井が新たなパイオニアとして数年後にメジャーで大活躍してくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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