アスレチックスに電撃入団した“二刀流” 森井翔太郎を日本スカウトはどう見ていたか…逸材の“米球界流出”は今後も続く?

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 新人合同自主トレもスタートし、キャンプインの足音が聞こえてきたプロ野球。ルーキーでは5球団が競合した宗山塁(明治大→楽天1位)や4球団が競合した金丸夢斗(関西大→中日1位)に注目が集まる一方で、今月彼らよりも大きな話題となったのが、アスレチックスとのマイナー契約が発表された桐朋・森井翔太郎だ。【西尾典文/野球ライター】

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早くからスカウトの注目を集めていた森井

 契約金は151万500ドルで、日本円に換算すると約2億3400万円。NPBのドラフトで上限として決められている契約金1億円の倍以上となっている。また、森井の通う桐朋は都内でも有数の進学校としても知られている。それを考慮されたのだろうか、契約金とは別に、引退後の「学業補助金」として25万ドル(約3900万円)の支給がついた。

 筆者が、森井の評判を聞いたのは2023年の春だ。NPBのある担当スカウトが当時2年生だった森井に対して「打者としてのスケールは抜群で、投手としても楽に140キロ以上のボールを投げます。来年が楽しみというレベルを超えていると思います」と話していたのをよく覚えている。

 初めてプレーを見たのは、2023年9月3日に行われた東京都大会ブロック予選の対新宿高戦。3番、ショートで先発出場した森井は第1打席と第5打席でいずれもセンターの頭を大きく超える当たりを放った。彼の打撃は、スカウトが話していた評判通りのものだった。

 では、森井がNPB入りを希望していた場合、どの程度の評価になったのだろうか。最初にその評判を話してくれたスカウトに聞くと、こんな回答が得られた。

有望アマチュア選手の渡米で日本球界が空洞化!?

「最初の1位入札でいきなり指名されたかは分かりませんが、“外れ1位”や“外れ外れ1位”まで含めれば、1位指名の12人に入ってきた可能性はかなり高かったと思います。バッターとしてのスケールで言えば、高校生の野手で最初に1位指名された石塚裕惺(花咲徳栄→巨人1位)より上ではないでしょうか。加えて、森井は投手としても150キロくらいのスピードを投げる肩があり、高い運動能力も備えています。不安な点は、桐朋は強豪高校ではなく、練習量が少ないので、プロの練習についていけるかということはあります。ですが、本人の意識も非常に高く、自主的にトレーニングも積んでいたので、大きなマイナスではないように思いました。特に、将来、チームの中心となるバッターが欲しいという球団は高く評価していたのではないでしょうか」(関東地区担当スカウト)

 実際、昨年夏に森井が出場した桐朋と富士森の試合には、NPB全12球団を含む日米14球団、合計42人ものスカウトが集結している。この試合で桐朋は敗れているように、公式戦で勝ち進むことが難しいと判断されたチームのドラフト候補には多くのスカウトが集結する傾向が強い。それでも、ここまでの人数のスカウトが集まるのはかなり珍しい。それだけ森井の評価が高かったことは間違いないだろう。

 そして、今回、森井がNPBのドラフト1位よりも好条件でメジャー球団と契約したことによって、日本の有望アマチュア選手が続々と米国に渡り、日本球界が空洞化するのではないかということを不安視する声も少なくない。メジャー球団と契約したわけではないが、2023年にも、高校通算140本塁打を放った花巻東の佐々木麟太郎が米・スタンフォード大に進学している。

 NPBのスカウトは、この点について、どう考えているのだろうか。

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