「仙台出身サラリーマン」が33歳で「サンマルクHD」社長になった意外な理由

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「チョコクロ」でおなじみのサンマルクカフェに、生麺が売りの鎌倉パスタ。外食業界の中でも独自路線を歩む“岡山発”企業・サンマルクホールディングスを率いるのは、仙台生まれの元証券マンだ。30歳にして同社の経営陣に加わり、その2年後に社長就任。岡山にも創業家にも縁もゆかりもないサラリーマンは、いかにして東証プライム市場に上場する大企業の社長となったのか。(以下は「週刊新潮」2025年1月23日号掲載の内容です)。

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「サンマルク」という名をきくと、「カフェ」を真っ先に思い浮かべる方は多かろう。

 一方、サンマルクホールディングス(以下、サンマルクHD)が展開する飲食ブランドは多岐にわたり、「鎌倉パスタ」をはじめとしたレストラン事業の売り上げは、カフェ事業をしのぐ規模になっている。さらに昨秋には「牛カツ京都勝牛」「牛かつもと村」のそれぞれの運営会社をほぼ同時に買収し、国内牛カツ市場をほぼ独占することとなった。

 こうして飲食業界の中でも注目を集める同社のトップを務めるのは、創業家の御曹司でもなければ、数々の企業経営に携わってきたベテラン経営者でもない。創業の地・岡山から1000キロ離れた仙台に生まれ、大卒後は証券会社で勤務していたという36歳、藤川祐樹社長だ。

証券マンから経営者へ

 経営者を目指して証券マンになったわけではないという藤川社長本人が、入社の経緯を語る。

「当社(サンマルクHD)の創業者・片山直之から声をかけられたのがきっかけです。もともとサンマルクの主幹事である証券会社の担当者として、私は働いていました。証券マンという立場で経営陣の方々と関わる中で、片山が私を評価してくれていたようです。実際に入社したのは、片山が亡くなった後になってしまいましたが、大きな転機になりました」

 飲食業界の名経営者として知られる片山氏は、1989年にサンマルクを創業し、東証プライム市場に上場する一大飲食チェーンにまで育て上げた。創業者として同社をけん引し続けたが、2018年に逝去。そんな片山氏が生前に声をかけたのが藤川氏だったのだ。

 とはいえ当時の藤川氏はまだ20代。証券会社からまったく違う畑に移ることに、不安はなかったのか。

「たしかにありましたね。当時私は30歳の手前。誤解を恐れずに言うと、そのまま証券会社にいれば、ある程度出世をして安定した仕事ができるのだろうとは思っていました。仕事自体にやりがいも感じていましたしね。ただ一方で、自分の力を試してみたい、もう少し経営の深い部分に関わる立場で仕事をしてみたいという思いが勝ったんです。また、当時のサンマルクHDは、営業利益率が10%を超えていたにもかかわらず、PER(株価収益率)は15倍くらいしかなく、割安感があった。こういう明確な課題が見えていたのも、後押しとなりましたね」

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