「脱ぐことはできますか?」…マスターズで“ドレスコード違反”とされたゴルフウェア、意外なハッピーエンドと「懲りない」選手

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あっと驚く巨大なバックプリント

 かつては「ダボダボ」「ダサい」と酷評されたマルボンのゴルフウェアは、その出来事を通じて、注目度も認知度も高まった。デイ自身が精力的にデザインや商品開発にもかかわるようになったことで、少しずつ、洗練されてきていると私は感じている。

 そして肝心の今季のデイのゴルフはどうかと言えば、開幕戦のザ・セントリーでは40位タイと振るわなかったが、西海岸シリーズの第1戦となったザ・アメリカン・エキスプレスでは大健闘して3位タイに食い込んだ。

 最終日は優勝争いに絡んでいたため、テレビ中継でデイの姿が大映しになる場面がきわめて多かった。そこで着ていた白いポロシャツと黒いパンツは、マルボンと契約した直後のウェアとはまったく異なるほどのスタイリッシュなデザインで、私は「マルボンが変わってきたな」と思いながら眺めていた。

 試合会場のPGAウエストは、カリフォルニアの砂漠地帯に位置しているため、1日の中でも気温差が激しい。デイはサンデー・アフタヌーンのラウンド終盤、肌寒さを感じて、白いポロシャツの上にトレーナー素材とおぼしきセーターを重ねた。そのセーターも白っぽい無地で、シンプルで素敵なデザインに見えていた。

 しかし、72ホール目を終えて、18番グリーンを去ろうとしたデイを捉えたテレビカメラは、セーターを着た彼の背中を写し出した。そこには、マルボンのキャラクターが大きく大きく描かれていて、思わずあっと驚かされた。

 そのデザインは、おそらくはマスターズを主催するオーガスタ・ナショナルからは受け入れられず、もしも着用していたら「そのセーターを脱ぐことはできますか?」と言われるであろうものだった。

 すでに昨年のマスターズでドレスコード違反を指摘され、ベストを脱いだデイが、別の大会会場だったとはいえ、巨大なバックプリントのセーターを堂々と着ていたことは、「懲りないなあ」と感心させられるとともに、ユニークな話題を提供してくれていることに、「ありがとう」とさえ言いたくなった。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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