「脱ぐことはできますか?」…マスターズで“ドレスコード違反”とされたゴルフウェア、意外なハッピーエンドと「懲りない」選手

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マスターズがザワついたウェア

 そんな「デイ&マルボン」にとって、いろいろな意味で大きな転機となったのは、昨年4月に開催されたメジャー大会、マスターズでの出来事だった。

 昨年のマスターズは悪天候で不規則進行となり、デイが2日目の朝へ持ち越された第1ラウンドの残りをプレーしていたときのこと。デイは「Malbon Championship Golf」という英字がほぼ全面に大きく入ったベストを着ていたのだが、ゴルフファンの目は、そのベストのデザインに釘付けになっていた。

 マルボンの巨大なロゴがあまりにも不自然に感じられ、多くの人々が違和感を覚えたのだろう。SNSでは「デイのベスト、ひどすぎる」「オーガスタ・ナショナルに叱られるぞ」といった酷評の嵐が巻き起こった。

 そうこうしているうちに、デイは第1ラウンドの残りをプレーし終えた。短い休憩を挟んで次なる第2ラウンドに突入したのだが、朝のうちは着ていたベストを着ていなかったため、「オーガスタ・ナショナルからベストを脱げって言われたに違いない」という噂が広がった。

ドレスコード違反のウェアで社会貢献

 米メディアが第2ラウンドを終えたデイを直撃したところ、デイは「オーガスタ・ナショナルのオフィシャルから『そのベストを脱ぐことはできますか?』と言われたので、僕は素直に『イエス』と答え、ベストを脱いだ。それぞれの試合には、それぞれの決まりがある。試合に出ている以上は、それぞれの決まりに従う必要があるからね」。

 メジャー・チャンピオンがメジャー大会の場でドレスコード違反を指摘されてウェアを脱ぐとは、きわめて珍しい出来事だったが、これには興味深い後日談があった。

 マスターズ後、デイが着ていた“問題のベスト”を入手できるかどうかの問い合わせがマルボンに殺到。そこでマルボンが248ドルで一般販売したところ、今度は「デイが実際に着ていたベストそのものが欲しい」という声も寄せられた。そしてオークションに出品したところ、驚くなかれ、1万8000ドル(約280万円)で落札されたという。

 米メディアによると、このベストの市場での売り上げとオークションの落札者が支払ったお金は、デイと愛妻エリーが創設した「ブライター・デイズ財団」を通じて、貧困や傷病で苦しむ人々のために役立てられるそうだ。

 また、デイは両親を肺がんで失ったため、売上金の一部はオハイオ州立大学のがん研究センターにも寄付された。ドレスコード違反のウェアが、大きなお金に変わり、社会貢献に役立てられたことは、何よりのハッピーエンドだった。

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