「30歳で子供もいることを理由に代表になれなかった」 悔しさを語らず育てた教え子が“パリ五輪銀メダル” 飛び込み界をけん引した「馬淵かの子さん」指導者としての人生
80歳を過ぎてもプールサイドに
近年は板橋美波さんや荒井祭里さんらも成長してきた。
「80歳を過ぎてもプールサイドでメガホンを持って選手を見守る。きりっと気が引き締まるのですが、褒める温かさもありました。私が(2023年に43歳で)引退した時“よう頑張ったね。あんたの背中を見て後輩が育ってきた”と声をかけて下さった。みんなチームというより家族。(玉井)陸斗も身内の大切な人を安心させたいと思うのと同じ気持ちを抱いていた」(寺内さん)
“今回メダルを取ってもらわんと、あと4年と言われたら困る”と冗談めかして玉井さんをパリに送り出した。凱旋(がいせん)し恩師の首にメダルをかけた玉井さんの手を握り、馬淵さんはありがとうと何度も繰り返した。
それからほどなく急に体調を崩し膵臓がんが見つかる。昨年末、肺炎を起こし、1月4日、86歳で逝去。
静かなる闘志を燃やし続けた名伯楽である。