「中国は恐ろしい。しかし、日本はもっと悪い」…米鉄鋼CEOの“暴言”はアメリカの本音か
日本人は卑怯で小ズルい
当然、日本に好意的なアメリカ人も大勢いるものの、それはあくまでも東海岸と西海岸のリベラルな土地の話である。鉄鋼が盛んなクリーブランドやピッツバーグといった保守的な地域では、アメリカ第一主義が当然の選択となる。それはデトロイトのような自動車の街でも同様だ。1980年代、デトロイトの米自動車メーカーの労働者が、ハンマーで日本車を破壊するパフォーマンスを見せたが、これこそ彼らの本音である。
GM、フォード、クライスラーというアメリカの誇りをトヨタ、ホンダ、日産に“完膚なきまでに叩き潰された”と考えた保守派は、当時、日本への強い怒りを抱いていた。当然、その思いは自身の子や孫に受け継がれ、そうした思想は今でも間違いなく残っているのである。その頃、アメリカの消費者から日本車が選ばれた理由は、燃費が良く、価格もそこまで高くなく、アメ車と比べて故障しなかったからである。消費者が重視する項目で優れていたわけで、日本車が売れるのは自然な流れだ。
だが、未だにパールハーバーや太平洋戦争を持ち出すアメリカ人は、日本人を卑怯で小ズルい悪党扱いをしている。不当に安く輸出をするなどして、アメ車を潰したと考えていたのだ。とにかくアメリカは正義で日本は悪者――。それがまさにゴンカルベスCEOの発言に表れている。トランプ氏はアメリカの産業を守るべく、関税を高める方針を明言している。
友好国と捉えない方が
正直、世界にとっては厄介な存在ではあるのだが、お人好しな日本の保守派は、安倍晋三氏とトランプ氏の「蜜月」こそが素晴らしかったという甘美なる記憶に浸っており、トランプ政権になれば日米関係が良好になると考えている。
ンなわけない。トランプ氏も基本はアメリカファーストの保守派で、ゴンカルベスCEO的な人からの支持を得て、アメリカファーストに邁進することであろう。その時、「反日」「反アジア」は重要なカードだ。
一般のアメリカ人は日本を同盟国とは思っていない。アメリカ政府も本心では「中国とロシアを牽制するための地政学的に価値ある属国」と思っているだろう。だから、利用できる時は利用することしか考えていない。政治家・企業家は中国や日本を批判することで、保守派の支持は得られる。
MLBについても、日本人差別は存在する。大谷翔平はどう考えてもMVPだろう、といった年でも「ゲレーロJr.の方がすごい」「ジャッジの方がすごい」「DHの選手にMVPはあげられない」などと、メジャーのレジェンド解説者がスポーツ番組で大谷のMVP獲得に異議を呈する。
これはよく理解できる。とにかくアメリカの保守派はプライドが高すぎるのだ。ベースボール発祥の地で日本人に何度もMVPを取らせるわけにはいかないと考え、屁理屈をひねくりだしては大谷のMVPはおかしい、と主張するのだ。
トランプ政権になれば、この傾向はより強くなるかもしれない。なぜなら保守的なアメリカ人は日本のことが嫌いだからだ。彼の国をあまり友好国と捉えない方がいいかもしれない。適度に距離を置き、日本はコウモリのように、ミーハー的に東南アジアやオセアニア各国と仲良くすればいい。アメリカに忠義を尽くす必要はない。
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