ノンスタ・石田の「漫才分析本」にプロ芸人が傾聴する理由
『答え合わせ』
昨年10月に出版されたNON STYLE・石田明の著書『答え合わせ』(マガジンハウス)が話題になっている。「M-1グランプリ2008」のチャンピオンであり、実力派漫才師としても知られる彼が、「漫才論」「M-1論」「採点論」「コンビ論」「未来論」の5章構成で漫才について徹底的に考察した一冊だ。版元であるマガジンハウス書籍編集部の公式Xアカウントによると、売れ行きは好調で電子版も含めてすでに7万部を突破しているという。
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【写真】「M-1」での優勝経験はナシ…テレビマンが苦言を呈した「小粒な審査員」とは?
石田はこの本が発売された直後の「M-1グランプリ2024」で審査員を務めていた。そこでのコメントが的確だと評判になったこともあり、著書の売上はまだまだ伸び続けている。
一方、たまたま同じ時期に令和ロマン・高比良くるまの著書『漫才過剰考察』(辰巳出版)も出版された。こちらはウェブの連載に書き下ろしを加えてまとめたものだ。2023年のM-1王者だったくるまが、漫才や「M-1」について深く考察している。その後、令和ロマンは2024年の「M-1」でも優勝を果たし、前人未到の連覇を達成した。こちらの本も石田の本と同じく順調に版を重ねている。
毎年、人々の漫才需要は「M-1」をピークににわかに高まり、あっという間に落ちていく。ワールドカップの開催期間中だけサッカーを見る人のように、少なくない数の日本人が年末の「M-1」を見ることでにわか漫才ファンになり、漫才について持論を述べたりする。もちろんそれ自体は悪いことではない。
石田とくるまの漫才分析本は、そのような受け手側の需要に応えるだけでなく、プロの芸人からも求められている。M-1優勝という輝かしい実績を誇る彼らの述べる「漫才論」というのは、プロとして舞台に立つ人間にとっても傾聴に値するものだろう。そこには、面白いネタを考えるためのコツや「M-1」で勝つためのノウハウが書かれているかもしれない。
石田は理論派の芸人として知られている。彼は昔から今までずっと自分自身のことを「つまらない人間」だと思ってきた。ただ、もともと面白い人間ではないからこそ、面白い漫才を作るにはどうすればいいのか、お客さんを笑わせるにはどうすればいいのか、ということについて人一倍深く考え続けてきた。そのことで石田の中に少しずつ自分なりの「漫才理論」が構築されていった。
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