トランプ大統領を支える「一握りの権力者」 スキルの低い者を「不要」と切り捨てる“デジタル封建主義”が米国民を抑圧する

国際

  • ブックマーク

「一握りの権力者による寡頭政治が始まる」

 ドナルド・トランプ氏は現地時間1月20日、2期目の米大統領就任式に臨んだ。トランプ氏は78歳。歴代最高齢での大統領就任だ。

 連邦議会議事堂で行われた就任式で第47代大統領となったトランプ氏は、「米国の黄金時代が今始まる」と述べ、不法移民対策など「米国の衰退」を反転させるために強硬な政策を推進することを誓った。

 トランプ氏への期待は1期目よりも高いようだ。米CNNの世論調査によれば、「トランプ氏は2期目に良い仕事をする」と回答した割合は56%で、1期目当時の48%よりも8ポイント高い。

 これに対して、退任したバイデン氏の支持率は散々だ。米ABCの世論調査によれば、バイデン氏の支持率は37%と、トランプ氏が1期目を終えたときの39%よりも低い。

 バイデン氏の4年間は、「自国第一」の孤立主義が台頭する中、米国が国際秩序の崩壊をなんとか食い止めようと苦しんだ時代として記憶されるのかもしれない。就任以来「民主主義を守る」と訴えてきたバイデン氏は、退任演説で「一握りの権力者による寡頭政治が米国で作られつつある」「米国を真の危険にさらす可能性のあるテック産業複合体の台頭を懸念する」との認識を示した。

「多くの人々はトランプ氏に裏切られるだろう」

「テック産業複合体」という言葉が示すとおり、バイデン氏が問題視しているのは巨大IT企業トップや大富豪のイーロン・マスク氏らの存在だ。トランプ氏にあからさまに接近し、政権運営に影響を与えようとしている。

 企業の幹部や投資家たちが日参するフロリダ州パームビーチのトランプ氏の邸宅マール・ア・ラゴは今や「第2のホワイトハウス」と呼ばれるようになっている。

 トランプ氏は、規制緩和などにより人工知能(AI)をはじめ先端産業分野を発展させ、米国の国富を増大させるとの戦略を有していると考えられる。

 経済学の分野にトリクルダウンという「理論」がある。富裕者がさらに富裕になれば、低所得者にも富が浸透し、経済活動全体が活性化するというものだ。トランプ氏はこの考えを信じているようだが、「社会格差の拡大を招くだけで、経済成長にさほど有効ではない」とする否定的な見方が最近では有力だ。

 2008年度ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、「トランプ氏が掲げる政策はインフレの増進で低所得層が多くの負担を受ける一方、規制緩和のおかげで高額所得者は利益を享受する」と批判的だ。

 トランプ氏は選挙期間中、支持者が切望する食料品価格の引き下げを公約にしていたが、後に撤回した。これを踏まえ、クルーグマン氏は「トランプ氏は『自分が大統領になれば暮らしが良くなる』と人々を欺いているだけだ。残酷かもしれないが、多くの人々は裏切られるだろう」と手厳しい。

次ページ:テクノロジー業界の危険なエリート主義

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。