佐々木朗希「ドジャース入り」もくすぶる“恨み節”…争奪戦過熱で中南米の若手選手に“被害者”も
背番号は「11」
佐々木朗希(23)のドジャース入りが決まった。ロッテ時代の背番号「17」は大谷翔平(30)が着けているので、何番になるかに注目が集まっていたが、21日、内野手のミゲル・ロハス(35)が、背番号を「11」から入団当時に着けていた「72」に変更することが球団から発表され、「11」は佐々木に譲ることになった。
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左腕に「11」のタトゥーを入れるほど愛着を持っていた、チームリーダーでもあるロハスの背番号を着けることになった佐々木だが、交渉期日ギリギリまで決断が遅れたため、最終候補に残ったパドレス、ブルージェイズはもちろん、中南米の野球組織まで混乱させてしまった。憧れだったメジャーリーグでの新スタートは「波乱の幕開け」となりそうだ。
「佐々木がドジャースと契約したとの一報が飛び込んできたのは1月17日でした。同じ日のほぼ同じ時間に、MLB公式サイトではブルージェイズがトレードを成立させたニュースも伝えられました。マイナー選手を放出し、その見返りで『国際ボーナスプール』の一部をガーディアンズから得た、と。このトレードは、佐々木獲得のためであったことは明白です」(米国人ライター)
25歳未満、海外プロリーグ在籍6年未満の選手はマイナー契約しか結べない。この通称「25歳ルール」により、「低コストで好投手が獲れる」とメジャーリーグ20球団が佐々木争奪戦に名乗りを挙げたが、最終候補に残ったのはドジャース、パドレス、ブルージェイズの3球団。25歳ルールでの契約は、各球団に割り当てられた国際ボーナスプールの範囲内でしか結べない。3球団の国際ボーナスプールの金額はパドレス、ブルージェイズが630万ドル(約9億95409万)で、ドジャースは514万6200ドル(約8億円)だった。
「佐々木の契約金は650万ドル(約10億1600万円)と報じられました」(前出・同)
現行ルールでは国際ボーナスプールは元の金額から最大60%まで“増額”できる。その方法はトレードだ。ドジャースは22歳の外野手、ディラン・キャンベルを放出し、相手球団であるフィリーズから136万ドルの国際ボーナスプールを得ている。佐々木との契約が合意する約4時間前のトレード成立だったので、佐々木獲得のため、ドジャースもギリギリまで奔走させられたのは間違いないだろう。
「パドレスとブルージェイズも“増額”に向けて動き、最終的に、3球団のなかで契約金の提示額がもっとも安かったのは、ドジャースでした」(現地記者)
それでも佐々木がドジャースを選んだ理由は何だったのか。その理由は、交渉1回目の面談で、佐々木サイドが出した“宿題”にあったという。
佐々木をどうプロデュースする?
佐々木サイドからメジャー球団に宿題が出されたことは本サイトでも伝えたが、気になるその中身について、複数の現地関係者の話を総合すると、代理人のジョエル・ウルフ氏(54)は「佐々木をどのように“プロデュース”するのか」について具体的に聞き出そうとしていたようだ。
「佐々木自身、24年シーズンの投球内容には納得していなかったようです。この先、どうやって自分を育てていくのか、直球のキレや球速を上げるための具体的な練習プログラムを聞き、3球団の中でいちばん興味を持ったのがドジャースだったようです」(前出・同)
好投手を育てた米球団は多い。しかし、ドジャースが育てたクレイトン・カーショウ(36)やフリオ・ウリアス(28=現所属先未定)などの生え抜き投手を見ると、速球派が目立つ。その速球派を育ててきた実績とプログラムが佐々木サイドに刺さったそうだ。
「佐々木の最速は102.52マイル(165キロ)と報道されています。ドジャースで剛速球を投げる出力を習得したいと思ったのでしょう。米球界の最速記録はベン・ジョイス(24=エンゼルスマイナー)が大学時代に出した105.5マイル(169.8キロ)。佐々木はジョイスの記録を破るかもしれません」(前出・同)
とはいえ、佐々木のドジャース入りについて好意的な見方ばかりがされているわけではい。“被害者”も出ている。メジャーリーグのドラフト対象外となる国(ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバなど中南米の国がメイン)の選手と交渉する「国際FA」の対象選手たちである。
「ドミニカ共和国の遊撃手、ダレル・モレルはパイレーツと約180万ドル(約2億7000万円)で契約する。モレルはドジャースと契約する予定だったが、市場に戻されてピッツバーグ(パイレーツ)に向かうことになった」
これは全米野球記者協会所属のフランシスコ・ロメロ記者が、自身のXで報じたもの。前出の米国人ライターによれば、「40万ドルでドジャースと契約する」と発表された外野手のオルラルド・パティーノも“契約取り消し”になったという。当初、ドジャースから提示されていたモレルの契約金は110万ドル(約1億7000万円)だったが白紙となり、改めてパイレーツと契約した。国際FAも、各球団の契約金は国際ボーナスプールの範囲内で支払われることになる。
「25歳ルールは相手国の野球組織を守る一面もあります。日本の有望な学生選手やNPBのマイナーで育成過程にある若手を青田買いしたら、その国の野球組織は成り立ちません。でも、中南米の選手に対して、国際ボーナスプールの意味合いは少し異なってきます。彼らは契約可能となる10代でメジャー入りを目指し、その国の野球アカデミーやアマチュア組織で野球を学んでいます。国際ボーナスプールで割り当てられた範囲内で、MLB各球団は若手を獲得してきました」(前出・米国人ライター)
こうした混乱を、ドミニカ共和国のニュースサイト「Z101」は、佐々木獲得のための影響と捉えていた。また、米野球専門誌「Baseball America」はこう報じている。
「国際独立野球協会(AIBI)が佐々木の交渉による被害を受けたとし、ニューヨークのMLB事務局やドミニカ共和国内にあるMLB支局、メジャーリーグ30球団に向けて、国際ボーナスプールの範囲内でしか契約できない25歳ルールの見直しを求める書簡を送った」
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