尹大統領逮捕でも“支持率逆転負け”…韓国国民は「李在明」野党の何に怒っているのか

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旅客機事故も要因に?

 尹大統領の支持率上昇の背景には何があるのか――「野党『共に民主党』が、尹大統領の次善策になれない」という意識が、韓国国民の間で強くなってきたからではないかとう見立ては強い。

 筆者の先輩である政治部出身の記者A氏はこう分析する。

「『共に民主党』は、李在明(イ・ジェミョン)代表の刑事裁判による有罪リスクを避けるため、尹大統領の迅速な弾劾に執着している。さらに、大統領権限代行であった韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理の弾劾訴追を発議し、その権限代行である崔相穆(チェ・サンモク)経済副総理まで弾劾を画策することで、与党と政府を脅かしている。こうした一連の動きに、国民は『共に民主党』に対しても否定的な感情を抱くようになってきたのでしょう」

 先の弾劾反対派の男性が訴えていたように、「共に民主党」は、政府が推進していた主要事業予算や青年就職支援予算を大幅に削減する形で、昨年12月初めに予算案を策定・通過させている。この動きが尹大統領の戒厳宣言の契機となったとされる。彼らが削減した予算の中には、1兆ウォン規模の「災害対策予備費」も含まれていた。昨年12月29日に起きた済州航空旅客機事故では、この予備削減が事後対応の遅れを招いた可能性があると指摘されている。これも国民の「共に民主党」に対する不満を高める要因になったともいわれる。

スピード弾劾で李在明代表の“無罪”も?

 大統領の次期有力候補とされる李在明代表は、現在5件の刑事裁判を抱えている。とりわけ選挙法違反疑惑の裁判では、既に一審で執行猶予付きの懲役刑が宣告されている。この事件で李代表に罰金100万ウォン以上が課されれば、今後5年間選挙への出馬が禁止されることになる。選挙法違反の裁判は速やかに結審する義務があるため、今年3月から4月内に二審判決が下される可能性が高い。もし尹大統領への弾劾審判が遅れれば、李代表の大統領選挙出馬が不可能になる可能性も出てくるわけだ。

「共に民主党』にしてみれば、李代表の裁判が終わる前に尹大統領を弾劾し、大統領選挙を早期に実施したい事情がある。しかし、その進め方が性急で世論の反発を招きつつある状況だ。

 もちろん、その目論見通りに李代表が大統領に就任しても、裁判がなくなるわけではない。とはいえ就任してしまえば、裁判所としても有罪判決を下すことへの心理的負担が生じるため、裁判に影響が出ることは避けられないと見られる。無罪判決だってありえるのだ。

 また、もし有罪判決が下されても、その時に多数の議席を占める『共に民主党』が「大統領の任期中には有罪判決を受けても辞任を必要としない」という内容の法律を制定し、その法案を大統領自身が承認してしまうこともありえる。そうなれば、李代表は任期満了まで大統領職を全うすることができるのだ。こうしたシナリオは、保守党や一部の政治専門家の間で予想されており、十分に実現しうる展開だ。

 尹大統領および与党の支持率急上昇をみると、野党の戦略が逆効果を生んでいる可能性が高い。大統領への支持は、野党に対する反発だけでなく、若者世代を含む国民の幅広い層に浸透しつつある。この動きは一時的なものに終わるのか、それとも新たな政治的転換点となるのか――。尹大統領と野党の対応が、今後の政局を左右しそうだ。

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