広まる「50年ローン」にauじぶんも参入…マイホーム買えない問題に朗報? 意外なターゲット層とリスクを解説

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auじぶん銀行では20代の半数以上がペアローンを選択

 もうひとつ、auじぶん銀行が50年ローンと同日に始めたサービスに「ペアローン連生団信」がある。

 通常、ペアローンで住宅ローンを組み、夫婦どちらかに“万が一”があった場合、片方の残債は免除される。がん100%保障の団信に入っていた場合は、所定のがんと診断されると残債が0になる。ペアローン連生団信の場合、夫婦の双方が2人分の団信加入のための「上乗せ金利」を負担(auじぶん銀行では保障内容に応じて年0.3~0.45%の上乗せ)することで、どちらかの“万が一”で夫婦の残債が全て免除される。

「事前調査によれば、住宅ローンを検討中のお客様の6割以上がペアローン連生団信を“魅力的”と感じてくださっている。想定では、新たにペアローンを選択されるお客様のうち、3~4割がペアローン連生団信に加入されると見込んでいます」(auじぶん銀行の担当者)

 他行でも少しずつ取り扱いが増えており、今後、高額な住宅ローンを組む際のリスク管理の助けになりそうだ。

 ひと昔前は敬遠する向きの多かったペアローンでの住宅購入だが、住宅価格の高騰と共働き世帯の増加が相まって、ずいぶん一般的になってきた。事実、auじぶん銀行では新規借入の約4割がペアローンを選択しているという。

「若い世代ほどペアローンを選択される比率が高い傾向があります。20代と40代では選択率に大きな差があります」(同)

なぜ新たな取り組みが続々と?

 住宅ローンは、銀行にとっては貸し倒れリスクが比較的少ない“手堅い商売”と言われるが、一方では利益を確保し続けるためには新規顧客の開拓が欠かせない。住宅ローンをめぐる一連の動きの背景について、先の塩澤氏は次のように解説する。

「auじぶん銀行をはじめ、店舗を持たずWEBで契約が完結するネット銀行は、店舗や人件費などのコストを軽くしてお得な金利を実現し、新規顧客の獲得でメガバンクを凌駕してきました。ところが、昨年7月に日銀が政策金利を0.25%に引き上げて以来、予想外の苦戦に直面しているのです」

 台風の目になっているのが、三菱UFJ銀行などメガバンクの“逆襲”だ。

「三菱UFJ銀行は、利上げ以降も適用金利を据え置いており、“低金利ランキング”でネット銀行を抜き第1位の座をキープしています。団信の保障内容も加味した“実質金利”はネット銀行も負けていないのですが、金利の安さを優先するユーザーの一部がメガバンクに逆流する動きが起きています」(同)

 銀行の収益構造の基本は、集めた預金を貸し出すことで利息を得る、というもの。給与口座をはじめ、多額の預金を抱えるメガバンクは、一般的にネット銀行よりも貸し出し余力で勝っており、体力勝負によって顧客獲得の巻き返しを図っている、という背景もあると言われている。

課題は金利以外の“強み”を増やしていくこと

「50年ローンやペアローン連生団信の取り扱い開始は、多様化するユーザーのニーズを細かく拾い上げ、少しでも顧客獲得競争を有利なものにしたい、というauじぶん銀行の狙いもあるのだと思います。もちろんこうした動きはユーザーにとっては歓迎すべきことですが、銀行間の競争は今後も激しさを増していくことでしょう」(塩澤氏)

 auじぶん銀行の担当者も、言葉を選びつつ政策金利引き上げ以降の“苦戦”を認める。

「やはりお客様にとって、“金利の低さ”がいかに優先事項であるかを再確認することになりました。時代が進み社会が変わり、お客様のニーズが多様化する今、金利面での努力を続けつつも、金利以外の面でも当行を選んで頂けるような“強み”を増やしていくことが我々の課題でもあります。今後も我々の強みであるKDDIグループとしての連携や、今回の50年ローンやペアローン連生団信といった、お客様の利便性を高めるサービスを提供していきたいと考えています」(担当者)

 今後も政策金利の利上げが予想される中、銀行のサービス内容にどのような変化が起きうるか、目が離せない状況が続きそうだ。

デイリー新潮編集部

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