広まる「50年ローン」にauじぶんも参入…マイホーム買えない問題に朗報? 意外なターゲット層とリスクを解説

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 1月14日、ネット銀行大手のauじぶん銀行が「借入期間最長50年」の住宅ローンの取り扱いを開始した。背景にあるのは近年の物件価格の高騰だが、想定しているのは、“意外な顧客層”だった。選択率が増加傾向にある「ペアローン連生団信」など、いま住宅ローン市場で起きている変化について、担当者に事情を聞いた。

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高年収でも買えなくってしまったマイホーム

 現在、変動金利の住宅ローン借入期間の主流は35年。それが50年ローンとなった場合、当然ながら利息の支払い期間が長くなるため返済総額は増加する一方、月々の返済額は少なくなる。

 今回auじぶん銀行が打ち出したのは、35年ローンと比較して「0.1%の上乗せ金利」で、50年ローンを組めるというもの。

「完済時の年齢が80歳以下であること」という年齢制限は従来と変わらない。35年ローンが組める“リミット”が45歳だったのに対し、50年ローンではそれが30歳となる。実質的には20代向けの住宅ローン商品と言っていいだろう。

 50年ローンを提供している銀行としては、同じネット銀行大手の住信SBIネット銀行(0.15%上乗せ)やメガバンクでは三井住友銀行(同0.15%)が同様の商品を展開している。このタイミングで、auじぶん銀行が50年ローンの取り扱いを開始した狙いは何か。

「近年の物件価格高騰から、単独債務での住宅ローン借入が難しくなってきています。借入期間を延ばして返済負担を減らそう、とのニーズが広がっていることが背景にありました」(auじぶん銀行の担当者)

 確かに、ここ数年の物件価格高騰の勢いは凄まじい。特に東京23区の新築マンションの平均価格は1.2億円を超えており、もはや一般的なサラリーマン年収では太刀打ちできないレベルとなっている。

 仮に、優良企業に勤め年収800万円を稼ぐ人が、物件購入を検討していたとして、単独債務で銀行の審査が通る上限額は「約5800万円」となるという。800万円は日本の平均年収を上回る“高年収”だが、都心でファミリータイプのマンションを購入するのはかなり難しい。夫婦2馬力で世帯年収が1600万円あったとしても、上限額は単純計算で「約1.2億円」。これでも、好条件の物件購入には心許ないというのが今の状況である。

 ところが、同じ年収でも返済期間を50年に延ばすと、月々の返済額はそのまま、借入可能額が約6900万円と約20%増えることになるのだ。

 やはり、50年ローンの登場はこうした“買いたくても買えない”首都圏の不動産事情を鑑みてのことなのだろうか。そう尋ねると、担当者から返ってきた言葉は意外なものだった。

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