トランプ就任でどうなる韓国…「米中どちらの味方か」の岐路に 米有力議員は韓国左派を“内通者”と非難
「中国に謝々」の李在明
――さすがに左派も2回目の弾劾訴追案は修正し「反日」部分を削りました。
鈴置:ええ。しかし、修正の効果があるかは疑問です。キム議員とは異なり中立的な立場の米議会調査局も、修正後に発表した報告書で、2回目の弾劾訴追案で削られた部分をきっちりと引用しました。「共に民主党」がチラリと見せた「本音」と判断したのでしょう。
「South Korean political Crisis: Martial Law and Impeachment」(2024年12月31日更新)で、韓国で政権交代が起きれば(1)対北朝鮮(2)インド太平洋(3)対中(4)対日――で大きく外交政策が変わるであろう、と予測しました。
米国が注目するのは弾劾訴追案だけではありません。「共に民主党」の大統領候補と見なされる李在明(イ・ジェミョン)代表はこれまで「反米従中」発言を繰り返してきました。
2022年9-10月に尹錫悦政権が日米と合同軍事演習を実施した際、李在明代表は「極端な親日行為」と非難。2023年8月に米キャンプデービッドで日米韓の首脳会談が開催される直前には「歴史の歯車を独立以前に戻す敗着」と呼びました。
2024年3月には「[台湾有事の際は]中国にも謝々、台湾にも謝々と言えばいい」と述べ、台湾への支援を拒否する姿勢を打ち出しました。典型的な韓国の反米左翼の言動です。
李在明代表は12月23日、P・ゴールドバーグ(Philip Goldberg)駐韓米国大使に会い「今後も自由民主主義陣営の一員として役割と責任を果たす」と述べました。大統領選挙を意識し、反米路線を引っ込めて親米路線を掲げたつもりでしょうが、発言を信用する人はいないでしょう。
12月26日には李在明代表は水嶋光一駐韓日本大使と会って「私は日本に対する愛情がとても深い」などと述べました。「日本は敵性国家」が口癖だった李在明代表です。どんなにお人好しな日本の政治家でもそれを信じる人はいないでしょう。それと同じです。
支持率が急回復の保守
――結局、米韓同盟を巡る左右の戦いは……。
鈴置:保守の完勝です。1月第3週の韓国ギャラップの世論調査(調査期間1月14―16日)によると、保守「国民の力」への支持率が39%で、「共に民主党」の36%を上回りました。
2024年10月第5週に32%の同率になって以来、保守の支持率は左派を下回っていました。ことに戒厳令直後の12月第3週は24%対48%とダブルスコアで左派に圧倒されていたのです。
韓国では、左派が大統領の代行まで弾劾するなど調子に乗ったことに国民が反感を抱いたから、と説明されています。私は内政だけでなく外交の不安も大きいと思います。
保守が集会で掲げる星条旗を見れば、戒厳令には強く反発した人でも、「左派を調子に乗せると同盟まで壊しかねないな」と思うからです。
――では、韓国では保守優勢が続く?
鈴置:それは分かりません。大きな変数があります。トランプ(Donald Trump)政権の再登板です。トランプ大統領は1期目がそうだったように北朝鮮との対話に動く可能性があります。少なくとも北朝鮮敵視策は打ち出さないでしょう。
こうした対北融和策は韓国の保守よりも左派との親和性が高い。韓国の保守はバイデン政権の時ほど「米国の後ろ盾」を国民に誇れなくなるのです。
インド太平洋や日本との関係も同様です。韓国の保守がいくらそうした外交を重視しても、トランプ政権に評価してもらえるとは限りません。トランプ大統領には「同志国が集まってことに当たる」発想が薄いのです。
さきほど引用した議会調査局の報告書は、韓国に左派政権が登場したら4点――(1)対北朝鮮(2)インド太平洋(3)対中(4)対日――で米韓の協力は軌道修正を余儀なくされると懸念しました。しかし、トランプ再登板で(1)(2)(4)はさほど問題ではなくなります。米国が韓国との協力を必要としなくなるからです。
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